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過去10年間の本県におけるインフルエンザの流行をみると,例年,正月明けの1月中旬頃から発生しはじめ,2月が流行のピークとなっている。ところが,今季,最初に集団かぜ発生の情報が当衛生研究所に飛び込んだのは,例年よりも2ヶ月早い11月16日である。最上地区の真室川町の某中学校で,発熱(38〜39℃),咳,咽頭痛および頭痛などを示す患者が多発という情報が寄せられた。
私達は本当にインフルエンザなのかと疑いを持ちながらも,早速その中学校へ赴き調査を実施した。この時点において,在校生392名中192名が罹患しており,罹患率は約50%であった。これらの患者の中から,病日の新しい(3日以内)者を10名選び,咽頭拭い液を採取し,発育鶏卵を用いてインフルエンザウイルスの分離を試み,10名中4名から,A型香港(AH3N2)インフルエンザウイルスが分離された。表1にそれらのウイルス分離状況および患者血清のHI抗体価の変動を示した。また,今回の分離株の中から任意にA/山形/352/85株を選び過去に分離されたA/愛知/2/68,A/熊本/22/76,A/山梨/2/77,A/石川/7/82,A/Philippines/2/82および今年5月の分離株A/山形/91/85,A/山形96/85の計7株に対するニワトリ(A/Philippines/2/82およびA/山形/96/85は予研から分与されたフェレット感染抗血清)抗血清を作成して抗原性を比較した。その結果を表2に示した。
その後,このインフルエンザ様患者の集団発生は,庄内地区の藤島町(11月22日),村山地区の中山町(11月25日)および置賜地区の南陽市(11月29日)でも確認され,全県下に波及した。山形県環境保健部保健予防課の調べによると,12月18日現在,69の小学校,66の中学校および17の高校から集団発生の報告があり,患者総数は25,291名を数えている。流行はまだ終息せず,今週(12月9日〜12月14日)も13,801の患者報告がある。
全国では,今季に入ってA香港型インフルエンザウイルスが,群馬県,東京都,神奈川県,長野県,三重県,大阪府,山口県,山梨県,山形県および岩手県の10都府県で順次確認され,その地域はさらに拡大し,12月3日付厚生省保健医療局結核難病感染症課の報告(インフルエンザ様疾患発生報告,第4報)によれば,この時点までに27都府県で本ウイルスが分離され,患者総数は334,545名に達している。(東北6県防疫情報に掲載)
山形県衛生研究所 大山 忍,大泉 昭子, 片桐 進
表1.ウイルス分離状況および患者血清のHI抗体価の変動
表2.分離ウイルスの抗原分析(AH3N2)
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