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Vol.7 (1986/2[072])

<特集>
ロタウイルスと小型下痢ウイルス


 厚生省サーベイランス事業の患者情報によると「乳児嘔吐下痢症」およびその他の感染性下痢症は毎年全く同じ発生パターンを示している(図1)。ロタウイルスの検出報告の増加は冬期の患者発生のピークとよく一致する(表1)。

 胃腸炎の病原ウイルスとして代表的なロタウイルスは,近年免疫学的方法による抗原検出あるいは細胞培養による分離が可能となったことによって検出報告数が年々増加している。ロタウイルスは現在までに少なくとも4種の血清型が知られている。予研および地研で組織された研究班によって同定用型別抗血清作成の共同作業が進行中である (参照)

 一方,ロタウイルス以外に,胃腸炎患者の便についてウイルス様小型粒子の検出がしばしば報告される(表1)。これらはまだ電顕による形態学的検索のみに依存しているので,現段階では正確な分類はむずかしい。参考までに1980年以降報告された小型下痢ウイルスの検出例を表2に列記した。報告者による病原体の記述はまだ不統一である。

 胃腸炎が報告されたウイルス検出例について各ウイルスの占める割合を表3にまとめた。

 ロタウイルスは胃腸症状を伴った者からのウイルス検出数の半数を占める。さらにそれら有症者について便からの検出数に限って比較すると約7割がロタウイルスであり,また,便から電顕によって検出された例についても同様7割となる。

 臨床診断別にみると,乳児嘔吐下痢症と診断され,ウイルスが検出された1032名中,ロタウイルスが検出された者は92.6%,その他の感染性下痢症では169人中66%であった。一方,小型下痢ウイルスは便から電顕で検出されるウイルスとしてはロタについで多く(17%),乳児嘔吐下痢症の患者からの検出報告においては1%にすぎないが,その他の感染性下痢症患者では7%であった。

 図2に胃腸炎症状のあった者について便からの月別ウイルス検出状況を示した。ロタが冬期に集中するのに対し,エンテロウイルスは夏に多く,アデノウイルスには季節性はめだたない。

 年齢別比較(表4)では,ロタウイルスは0〜1歳が中心(83%)であるのに対し,小型下痢ウイルスのこの年齢からの報告は42%で,26%が20歳以上の成人から検出されている。



図1.乳児嘔吐下痢症とその他の感染性下痢症の患者発生状況
表1.月別検出数
表2.「小型下痢ウイルス」の内訳
表3.検体の由来によるウイルス検出状況
図2.胃腸炎症状のあったものの便からの月別ウイルス検出状況(1984〜1985年)
表4.ロタと小型下痢ウイルス検出例の年齢分布(1984〜1985年)





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