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Vol.7 (1986/2[072])

<国内情報>
下痢症ウイルスの診断とレファレンスに関する検討委員会の経過報告


 昭和58年から始まった厚生省の「衛生微生物レファレンスシステム研究班」(班長:愛知衛研,井上裕正)の中の小委員会「ウイルス検査法のマニュアル化に関する委員会」(委員長:予研,山崎修道)は,昨年度の活動の1つとして「ウイルス性下痢症検査法」のマニュアルを完成し,全国の地研に配布した。これに引き続いて同委員会は,本年度(昭和60年)新たに「下痢症ウイルスの診断とレファレンスに関する検討委員会」を組織し,昭和60年11月25日に第一回委員会を予研において開催し,以下の議題について討議した。

 (1) 電顕法による各種下痢症ウイルスの全国検出状況。

 (2) ロタウイルス血清型同定のための国内レファレンス確立の試み。

 (3) 各種小型ウイルスの診断とレファレンスに関する問題。

 以上の問題の中,議題(2)を本年度の実行計画に組み入れることにした。現在下痢症ウイルスの検査を実施している衛研の数は増えつつあるが,その中から9機関の協力を求め,予研との共同作業によって,4血清型のロタウイルス(Serotype1,2,3,4)に対する免疫血清を作成することになった。その標準株(表1)と増殖用細胞(MA104)を予研ウイルス中央検査部で準備し,本年1月末に協力機関に送付した。免疫原はMA104細胞で増殖させたウイルス液を出発材料とし,PEGとダイフロン処理で濃縮精製した後,CsCl密度勾配遠心にて分離精製したビリオン(1.36g/cm3)を用いる。これを抗体陰性を確認したモルモットに免疫して抗血清を作成し,交叉反応試験を行い型特異中和抗体価を決定する。国内標準血清の完成までに約6ヶ月を予定している。

 ロタウイルス以外のいわゆる各種小型ウイルス(SRV)については,現在電顕による形態学的調査のみに依存しており,免疫学的同定に必要な国内レファレンスが確立していない。その最大のネックは各種下痢症ウイルスの量的確保の困難性にあり,この問題を解決するためには全国各地の医療機関並びに予研と地研のウイルス検査担当者の協力が是非とも必要である。



国立予防衛生研究所 山崎 修道


表1.ロタウイルス国内標準株(候補)





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