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1985年12月に福岡市内でShigella sonneiによる赤痢の集団発生があったので概要を報告する。
1)発生年月日:1985年12月4日から21日
2)発生場所:福岡市南区。1保育園を中心に4小学校,1中学校,1高校へ波及した。
3)患者数:81名
4)延検体数:7,253
5)検出菌:S.sonnei
6)当所での菌検出者:70名
7)発端および経過
1958年12月4日に,市内南区のN病院より南保健所へT小学校4年生男児の疑似赤痢の届け出がなされ,調査の結果,真性と判明した。当所にて家族の検便を行ったところ,姉(T小学校6年A組)よりS.sonneiを分離した。さらに5〜7日にかけて行ったT小学校全員の検便の結果,6年A組の3名から同菌を分離した。9日に再びN病院よりY保育園児1名の疑似赤痢の届け出があり,当所で検査したところS.sonneiを分離した。これより同保育園を中心にして4小学校,1中学校,1高校の在籍者およびそれらの家族に菌陽性者が拡大し,21日までに延7,253名の検便を行い,70名よりS.sonneiを分離した(表1)。そのうち38名がY保育園児と保母(2名)で3歳と4歳の組に集中した(表2)。T小学校で6年生4名,O小学校で3年生2名,N小学校で2年生2名が同一クラスでの菌陽性者であり,クラス内での感染が推定された。陽性者は10〜12日に集中しており(図1)前述のクラス内感染が推定される者以外はY保育園の園児および家族であり,同園が集団発生の場となったことがうかがえるが,発端となったT小4年の患者と,Y保育園との関連は現在のところ不明である。
福岡市衛生試験所 村尾 利光,真子 俊博
表1.S.sonneiの検出状況
表2.Y保育園のS.sonnei検出状況
図1.検査日別菌陽性者数(計70名)
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