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Vol.7 (1986/2[072])

<外国情報>
髄膜炎菌感染症流行の絶滅−英国


 髄膜炎菌感染症の流行はまれであるが,ひとたび起こると広範に報道され,公衆も知識不足から集団ヒステリーにも似た状況に陥る。最近2年間に英国北西部に起こった2つの髄膜炎菌感染症の小流行はそれを絶滅するための原則をいくつか明らかにしている。

 流行1:1983年12月の10日間に北マンチェスターで1人,バリーで2人の10代の子が髄膜炎菌感染症にかかった。3人とも友人と共に放課後ディスコに行っていたが,咽頭ぬぐい液採取や集団予防接種のような絶滅対策はディスコ常連相手には実用的でなく,登校児童に限るしかなかった。180人から咽頭ぬぐい液が採取され,23人(13%)に保菌が認められたが,2株だけがB群15型スルフォナミド耐性菌であった。この株の保菌児童とその家族接触者のみに化学療法を施行し,地区開業医には流行の事実と絶滅対策を知らせ,警戒を呼びかけるにとどめた。以後発生例はなかった。

 流行2:前流行例と同じく10代の3人が2週間以内に髄膜炎菌性髄膜炎で1つの病院に入院したことで明らかとなった。彼らは同じ学校だが同じ学級ではなかった。その2人から共にスルフォナミド感受性でフラシュシステムでは型別不能のC群菌が分離された。

 症例の家族接触者の予防が必要なことは明白であるが,学校内で伝播した証拠があるので校内接触者の検査もまた重要である。症例が出た年内に全自動を含む咽頭ぬぐい液を475検体採取した。87検体(19%)から髄膜炎菌が分離され,そのうちC群髄膜炎菌株は27検体(5.6%)であった。前回同様,予防はC群菌株を保菌する学童とその家族に限定された。以後発生例はなかった。

 髄膜炎菌感染症の流行を絶滅する原則

 1.臨床分離株を確認し,群別,型別,スルフォナミド感受性試験をすること。

 2.症例間のつながりを確かめ危険性のある共同体,たとえば家族,学校,青少年クラブをきめること。寄宿学校,動員キャンプあるいは留置場のような閉鎖的共同体では,ひとたび流行株が絶滅されると再導入が起こることはまずない。全日制学校のようなより開放的な共同体では絶滅させようという企てはより失敗しやすい。

 3.採用できそうな対策として,集団予防接種,危険性のある集団の咽頭ぬぐい液採取と選択的予防処置,ワクチン接種がある。

 集団予防:これを施行しなければならないことはまれで,指定された菌株の保菌率が高いことが示されている閉鎖集団においてのみ成功の見込みがある。

 咽頭ぬぐい液採取と選択的予防:もしも危険に曝されている集団が特定可能であれば,咽頭ぬぐい液を採取して予防するのが最も容易な方法である。通常流行株保持者は集団の5%以下の小さな比率で,この株の保菌者と家族接触者にだけ化学療法による予防をするべきである。この場合,流行株が絶滅されたことを確かめるために予防内服後保菌者の咽頭ぬぐい液の再採取をすることが重要である。予防内服が効果的なのは80〜90%であるから,しばしば保菌者の再治療が必要なこともある。

 ワクチン接種:現在A群およびC群の髄膜炎菌にワクチンの使用が可能である。B群の2b型と15型に対するワクチンが現在試験中である。もしも流行株がAかCであれば,先に述べた他の対策と共にワクチン免疫が考慮されよう。

 以上の原則は指針にすぎず,状況ごとにそれぞれ特有の問題がある。

(CDR,85/46,1985)






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