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ペスト流行の維持にはヒトと齧歯類以外の哺乳動物は役立っていないが,しばしば疫学上仲介的な役割を演じることがある。たとえばイヌやネコが家にノミを持ち込み,通常イヌは感染しても臨床症状を示さないが,ネコは重症になるので,直接接触することによって齧歯類とヒトの間を橋渡しすることがある。
北米合衆国では人体例が1975〜1984年の期間に毎年平均20例を数えた。抗生物質が有効だが致死率が18%にも及んでいる。保健当局は動物汚染地域では,検査室で治療の方針を決めるよりも,むしろ疑いの強い患者を迅速に治療してしまうことでペストの致死率を減じている。西部15州で齧歯類とノミのペストが知られたが,人体例が最も多いのは南西部諸州(アリゾナ,南部コロラドおよびニューメキシコ)と太平洋諸州(カリフォルニアおよび南部オレゴン)である。この10年間ペストにかかったヒトは生後1週から79歳の年齢にわたり,多くは20歳以下の青少年で,死亡例は55歳以上が多い。
ヒトのペストは国際的,合衆国内,州内,地方内で届出を求められており,北米合衆国ではCDCが確認する。西部諸州では州その他連邦当局の協力を得てヒトへの波及を予防するために,齧歯類,肉食動物,家畜犬などについて血清学的検査をおこなっている。
ヒトペストは1975〜1984年は200例あった。1984年は31例中6例死亡(19%),そのうち2例は20歳以下,3例は20代,1例は65歳であった。前年同様患者年齢は1歳から70歳にわたり,若いヒトほど多く,男性23例,女性8例,31例中4例は診察当初から第一次ペスト敗血症,27例は腺ペストであった。3例は二次性ペスト肺炎を発症した。
1984年の人体例は6州20郡におよび,動物のペストは10州の地方,州,連邦当局およびCDCによって,ノミや動物の組織からの分離または血清中の抗体検出によって診断された。いままでなかった4郡に人体例が発生,1郡では1913年以来の人体例であった。カリフォルニアの6例中1例は獣医が罹患し,他の1例は夫とは無関係に獣医の妻が罹患した。カーン郡の1例はロサンゼルスで入院後29日で二次性ペスト肺炎で死亡した。コロラド州ではロッキー山の東および西斜面で発生し,3例はノミ,2例は岩リスに関係し,この地域の岩リスその他の齧歯類に広範な動物間ペスト流行があることを反映している。
ナバホインディアン居留地の血清抗体サーベイランスで1983年のイヌ血清1,418検体中32倍以上のペスト抗体価は26.5%,128倍以上が21.9%にみられ,陽性力価の幾何平均は256であったが,1984年のイヌ血清ではそれぞれ12.2%,3.9%および幾何平均84と減少した。しかし,高力価の血清もあることはナバホ居留地の動物ペスト流行に“過熱点”が残っていることを示している。
要約するに,北米合衆国のヒトのペストは動物間ペスト流行が継続し拡大した結果,1983年の人体例40の記録となったと思われる。動物間のペスト流行には特徴的に変動と周期性があり,動物,ヒトともに1985年には減少するとみられる。このパターンが反覆されるとしたら次期は1988年または89年に再増加すると考えられる。
(CDC,MMWR,34,No.2SS,1985)
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