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1984年11月1日,36歳の女教師が肺結核と診断された。彼女は3ヶ月間不快で体重減少し,慢性の咳が出た。初め咳は喫煙によるものと考えたが,疲労感が増すので医師を訪れ,顕微鏡で痰中に抗酸菌が検出され,培養で確認された。幼少時父親が結核だったが彼女は症状を示さず,11年前の胸部X線像は正常だった。密接な接触者は夫,近親者および小学校の7歳の児童である。父以外近親に結核患者はなかったが,検査の結果,学童11人に感染の兆候が判明した。
学校には263人の生徒と要員37人がおり,彼女の学級は32人であった。彼女は秋学期の前半に感染したと考えられた。11月12日にHeaf法によるツベルクリン反応試験が,親が拒否した1人を除く小学校の全員におこなわれ,その後12月10日に看護婦学校を含めて,さらに1985年2月23日にも行われた。スタッフは11月後半と3月に胸部X線写真を撮った。
11月のHeaf試験で児童5人が2度の反応,1人が3度の反応を示した。6人の胸部X線は正常で,2人は肺門リンパ節炎で1人には肺浸潤があった。最後に教師と接触した後6週の12月には同じ学級の児童3人(前回は陰性)が新たにツベルクリン陽性となった。彼らの胸部X線像は正常であった。3月には12月にインド旅行した少年2人がツベルクリン陽性になった。1人はその学級で,0度から3度に変わり,胸部X線写真に石灰化病巣が見えた。前半にその教師の学級にいた他の1人は1度から4度に変わり,胸部X線像は正常であった。これら11人中胸部X線像が正常な児童は毎日100〜150mgのイソナイアジドを9ヶ月投与され,胸部X線像が異常な児童はそれに加えて毎日300〜450mgのリファムピシンが投与された。彼らの家族接触者も調べられたが,その後症例は見られなかった。
32人の級児童中少なくとも9人は学校で彼女と接触した結果感染したように見える。インド旅行した2人の少年はこの学校よりもむしろインドで病気にかかったのかもしれない。
校内のその他の児童中2人はHeaf試験に2度の反応であったが,共にBCG接種を受けており,胸部X線像は正常であった。反応が1度の児童が20人いた。このうち生後BCG接種を受けたことがなかった児童に胸部X線像に異常はみられなかった。
本報告で示された重要な点は条件によって結核が成人から学童にたやすく感染することである。重症感染はなく,感染拡大もなかったが,迅速で広範な検査が必要であることが確認された。
(CDR,85/46,1985)
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