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Vol.7 (1986/5[075])

<特集>
食中毒関連菌 1983〜1985年


 従来から細菌性食中毒の起因菌とみなされてきたのは病原大腸菌,サルモネラ,腸炎ビブリオ,黄色ブドウ球菌,セレウス菌,ウエルシュ菌およびボツリヌス菌であったが,厚生省は1982年,上記以外に10種あまりの急性胃腸炎または下痢症起因菌についても集団発生に際しては,食品衛生法にもとずく食中毒として対処するよう通知した(ナグビブリオ,カンピロバクター等の食品衛生上の取り扱いについて・環食第59号,昭和57年3月11日)。

 これら新しく食中毒起因菌に加えられたものを含め,本情報に報告された最近3年間のヒト由来食中毒起因菌検出状況を表1に示した。報告機関別集計の特徴として,地研・保健所では集団発生の患者および集団検診による健康者からの検出報告が含まれるのに対し,医療機関では主として散発患者からの検出例である。検疫所の報告はすべて海外から帰国した者からの検出成績である。

 地研・保健所と医療機関ではサルモネラ,カンピロバクター,腸炎ビブリオ,病原大腸菌,黄色ブドウ球菌が上位を占め,これら5菌種が報告数合計のそれぞれ93%および95%である。検疫所ではサルモネラ,腸炎ビブリオについでプレシモオナス・シゲロイデスが多く,この菌とコレラ菌(O1以外)の検出数は他の機関を上まわっている。検疫所集計では病原大腸菌を含めた上位5菌種が合計の98%を占める。

 新しく指定された食中毒菌のうち,ナグビブリオなど5菌種について図1に月別検出状況を示した。いずれもピークは7〜9月にみられるが,検出は年間を通じて報告される。

 地研・保健所から1983〜85年の3年間に報告された流行・集団発生に関する情報のうち,新しい食中毒起因菌関連としては,カンピロバクターJ/Cを原因菌とする発生が99件,ウエルシュ菌が30件,セレウス菌が16件,コレラ菌(O1以外)2件,ビブリオ・ミミカス2件,プレシオモナス・シゲロイデス1件,エルシニア・エンテロコリチカ1件,複数菌種分離が23件報告された。特にビブリオ・フルビアリスは単独での流行の報告はなく,全例腸炎ビブリオと同時に検出されている(表2)。

 ボツリヌス菌に関してはE型菌の検出が毎年少数報告されるが,1984年6月,からしれんこんによるボツリヌス中毒の集団発生では原因食品と患者から検出された毒素および菌はすべてA型であった。



表1.ヒト由来の食中毒起因菌検出状況 1983〜1985年に検出報告された菌数および割合
図1.月別ヒト由来食中毒起因菌検出状況(1983〜1985年)
表2.複数菌種分離がみられた流行・集団発生事例(地研・保健所)1983年〜1985年





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