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(本月報6巻2号・9号に一部既報)。
1984年8月〜85年1月のフィンランドにおける3型野生株流行で最終的に9例の麻痺と1例の無菌性髄膜炎が診断された(表)。家族および接触者の39/86(45%)の便および咽喉から,さらに下水調査でヘルシンキ地区の10ヶ所と他の市町21のうち13地区で,3型ウイルスが分離された。
この流行前のこの国の最後の麻痺患者は1964年のワクチン未接種1歳女児の3型1例だった。82年まで,学齢前の子供の便材料スクリーニング,下水試験および無菌性髄膜炎患者からのウイルス分離はいずれも陰性,さらに1982〜84年は患者調査のみ実施され,毎年約1,000例のウイルス性が疑われる神経疾患からは野生ポリオウイルスは検出されていない。
流行が明らかになるとただちに18歳以下全員(約150万人分)に不活化ワクチン(IPV)が投与され,さらに85年2〜3月に3価生ワクチン(OPV)が6ヶ月以下を除く全国民に投与された(対象者4,800万人,投与率94%)。免疫不全者とその家族には高力価IPVが投与された。1985年5月以降,国内,近隣国とも野生株は検出されていない。分離株はいずれもフィンガープリント法できわめて近縁のウイルスであった。
OPV3回投与後の米国の7歳以下の子供の96〜97%はフィンランド株およびその他3株のポリオ3型株に対して中和抗体を保有,一方,10〜12歳ではSaukett(79%),フィンランド株(75%)に対するよりもセビン3型(92%)および1980年米国分離株(96%)に高い保有率を示した。
今回のフィンランドの流行の原因はおそらく次の要素の合併したものだろう。(1)従来のIPVの3型抗原性が低かった(1982年のワクチン完了3歳児の抗体保有率は1:4で30%)。1986年から高力価IPV使用を開始した。(2)ワクチン接種率の低下(3歳児で1970年代は99%だったが,1983年は73%。学童は追加接種によりもっと高い)。(3)IPVと流行株の抗原性の差異が低抗体レベルの人の間で増殖,散布を可能にした。ただし,米国の子供ではセビン株に対し90%以上が抗体陽性であり,フィンランド株と保有率の差が大きくないから,この株に曝露されても大丈夫だろう。
(CDC,MMWR,35,No.6,1986)
TABLE 1.Clinical and epidemiologic data on poliomyelitis cases - Finland, August 1984-January 1985
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