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Vol.7 (1986/6[076])

<国内情報>
感染性腸炎研究会報告 1985年 1.感染性腸炎起因菌の分離状況


 1985年の各種病原体の分離頻度は概ね例年と大差がない(表1)が,Campylobacter jejunicoliは思ったほどの増加がみられず,また,Klebsiella oxytocaの分離頻度は年をおって低下し,1985年には1.9%にすぎなかった。なお,このK.okytocaは薬剤関連出血性腸炎の指標としての意義があるとして毎年集計しているが,腸管病原性は認められていないので例年( )内に記載している。さきに食中毒の起因菌として指定されたVibrio Cholerae non O1をはじめとする新しい菌種とか,Entamoeba histolyticaなどの原虫類は「その他」に含められているが,その検出率が次第に上昇しつつあることが近年の特色で,1985年には15.7%を示した。

 病原菌別年齢分布もほぼ例年のごとくで,Shigellaは青壮年層に多く,C.jejunicoliは青年層へ,Vibrio parahaemolyticusは壮年層へそれぞれピークがかたよっている。

 CampylobacterSalmonellaでは小児にもう1つのピークがみられることと,この年齢層にはV.parahaemolyticusの分離例がほとんどないことも特徴である(図1)。

 月別患者数では近年は細菌性赤痢が3月,8月に多く,春夏の休暇を利用して海外旅行を行う青壮年が多いことを物語っている。

 SalmonellaCampylobacterでは季節的変動は明らかでないが,V.parahaemolyticusは外国感染例を除いては6〜11月に集中していることは変りがない(図2)。

 赤痢流行菌型の年次推移(図3)では,わが国の主要流行菌型のB群S.flexneriとD群S.sonneiの間に,1962年から今日までに計3回の入れ替りがあった。その3回目は1982年で,以来S.sonneiが上位となり,Shigella全分離菌の約60%を占めている。

 Salmonella菌型を年次別にみると(図4),この年もB群菌が圧倒的に多いが,近年はC2群の増加がめだっている。



感染性腸炎研究会参加都市立14伝染病院(市立札幌病院南ヶ丘分院,東京都立豊島病院,同駒込病院,同墨東病院,同荏原病院,川崎市立川崎病院,横浜市立万治病院,名古屋市立東市民病院,京都市立病院,大阪市立桃山病院,神戸市立中央市民病院,広島市立舟入病院,北九州市立朝日ヶ丘病院,福岡市立こども病院・感染症センター)に1985年に収容された感染性腸炎症例による。



感染性腸炎研究会(会長 斉藤 誠)
富沢 功(市立札幌病院南ヶ丘分院)
松原義雄(東京都立豊島病院)ほか


表1.感染性腸炎入院患者(含保菌者)数と病原体検出頻度(1981〜1985年)都市立伝染病院
図1.病原菌別年齢分布
図2.月別・病原体別患者数(含腸パラ)
図3.赤痢流行菌型の年次推移(1962〜1985年)
図4.サルモネラ菌型の年次推移(1975〜1985年)





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