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Vol.7 (1986/7[077])

<国内情報>
我が国におけるAIDSに関する疫学的考察


 我が国におけるAIDS患者は,本年6月現在16名(血友病患者8名・男性同性愛者8名)の報告があり,そのうち既に10名が死亡している。今後,教育啓発を含め,患者早期発見のためのサーベイランス網の拡充,2次感染防止等のAIDS対策を推進していく必要がある。

 1982年,アメリカ合衆国においてAIDS(後天性免疫不全症候群)の診断名が使用されて以来,アメリカ,ヨーロッパ諸国を中心としてAIDS患者発見の報告が急増し,AIDSはにわかに社会的注目を浴びる疾患となった。我が国でも,1985年3月初めて患者発見の報告がなされ,本年6月現在16名の患者が発生している。そこで,今回,これまでの患者報告から若干の疫学的分析を行ったのでその結果について報告する。

 対象および方法:本年6月12日までに報告のあったAIDS患者16名について,AIDSサーベイランス調査表をもとに,患者の性,年齢,リスクファクター,転帰,発症時期,日和見感染状況,臨床検査結果,罹病期間(死亡例)について検討した。

 結果:(1)性:16名すべてが男性である。(2)年齢:30代が8名と最も多く,次いで20代が3名と,40歳未満の者が全患者の約69%を占めている(表1)。(3)リスクファクター:血友病患者が8名,男性同性愛者が8名である。(4)転帰:現在10名が死亡し(致命率62.5%),3名が通院治療,2名が入院治療である(表2)。(5)発生時期:1981年1名の発生を最初に少しずつ増加し,昨年は5名の発症があった(図1)。(6)日和見感染症:カンジダ症(6名),カリニ肺炎(6名)の随伴者が多かった(表3)。(7)臨床検査結果:@LAV/HTLV−V抗体:16名すべて陽性であった。ATリンパ球サブセット:T4/T8比0.4未満の者が15名とほとんどを占めている(表4)。(8)罹病期間:発症後1ヶ月〜3年の間に死亡しており,発症後2年までに60%の者が死亡している(図2)。



厚生省保健医療局結核難病感染症課感染症対策室


表1.年齢分布
表2.現在の状態(転帰)
図1.発症時期
表3.日和見感染症
表4.Tリンパ球サブセット(T4/T8比)
図2.発病から死亡までの期間(累積)
Epidemiological Studies of Serology in Japan





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