|
当研究会ではCP,TC,KM,ABPCおよびNAの5剤に対する分離赤痢菌の感受性検査を続けているが,1976年に一度低下した耐性頻度はその後再び上昇し,1985年には73.5%(国内株86.4%,外国由来株69.1%)となった(図1)。
各種病原菌の個々の薬剤に対する耐性頻度を図2に示す。Shigellaは最近,ABPCのほかNAに対する耐性株もやや増加の傾向にある。EMに対してはC.jejuni/coliはつねに感受性であるが,他の感染性腸炎起因菌は本剤に対する耐性頻度が高い。
有症者の臨床症状を比較すると(図3),赤痢は概して軽症である。腹痛,悪心,嘔吐はV.parahaemolyticusに強い。また,便回数および最高体温はSalmonella,C.jejuni/coliの順,血便の頻度はC.jejuni/coli,Salmonellaの順であった。各症状の回復までに要する日数は,いずれもSalmonellaが最も遅れた。
K.oxytoca分離例はそのほとんどが薬剤関連出血性腸炎であるが,最高体温を除くどの症状についても他の感染性腸炎に比べてむしろその頻度が高く,とくに血便の頻度はほとんど100%に達した。
感染性腸炎研究会参加都市立14伝染病院(市立札幌病院南ヶ丘分院,東京都立豊島病院,同駒込病院,同墨東病院,同荏原病院,川崎市立川崎病院,横浜市立万治病院,名古屋市立東市民病院,京都市立病院,大阪市立桃山病院,神戸市立中央市民病院,広島市立舟入病院,北九州市立朝日ヶ丘病院,福岡市立こども病院・感染症センター)に1985年に収容された感染性腸炎症例による。
感染性腸炎研究会(会長 斉藤 誠)
富沢 功(市立札幌病院南ヶ丘分院)
松原義雄(東京都立豊島病院)ほか
図1.赤痢菌の薬剤耐性頻度の年次推移(CP,TC,KM,ABPC,NA 5剤について)
図2.各種病原菌の個々の薬剤に対する耐性頻度
図3.分離菌別症状経過の比較(1985)
|