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Vol.7 (1986/8[078])

<国内情報>
ELISAおよびDNAプローブを用いての組織侵入性大腸菌の同定について


 組織侵入性大腸菌(Enteroinvasive E.coli,EIEC)は,赤痢菌と同様に大腸粘膜に侵入しかつ増殖して,細菌性赤痢に酷似する疾病をひきおこす。病原菌として同定するには,培養細胞に侵入し炎症を起こす能力をもつかどうかをHeLa細胞等への侵入性および,モルモット眼への結膜炎惹起能(Sereny試験)により調べる必要があるが,本菌がある特定の血清型に属するものが多いため一般には血清型を対象にした型別試験が広く用いられてきた。

 最近,組織侵入性大腸菌にも赤痢菌同様に,細胞侵入性を支配する大きな(120〜140メガダルトン)プラスミドが存在し,そのプラスミドは赤痢菌および組織侵入性大腸菌間で相互変換可能であり,組織侵入性に関して共通の機能をもっていることが見出された。また,プラスミドの存在しない菌は無毒となることから,プラスミドの有無と組織侵入性の保持との間に相関があることが明らかになった。そこで侵入性プラスミドの存在を簡便に検出する方法として,我々はプラスミドがコードしている産物をELISAで検出することおよび,プラスミド上の病原性を支配する遺伝子をプローブとしてコロニーハイブリダイゼーションを行う方法を開発した。

 赤痢菌のもつ140メガダルトンの侵入性プラスミドを獲得したE.coliK−12株生菌をウナギに静注免役し,その血清をプラスミドをもたない親株E.coliK−12で吸収したものをELISAのための抗体として用いた。この抗体は,プラスミドによってコードされている31,42,60キロダルトンのタンパク質を認識した。

 DNAプローブとしては,140メガダルトンプラスミド上の細胞侵入性に関与する遺伝子群の一部(4.1Kb)を用いた。

 これらを用いて都衛研に保存してあるEIEC serogroupに属する大腸菌および赤痢菌について調べた結果を表に示す。ELISAおよびDNAハイブリダイゼーションで陽性を示すものと細胞侵入性および大きなプラスミドの存在との間に完全な相関が認められた。これらの方法はEIEC株を同定するのに有用と思われる。ELISAよりもっと手軽にできるLatex凝集反応を用いる方法について今後検討する予定である。



国立予防衛生研究所 渡辺 治雄,伊藤 健一郎,中村 明子
東京都立衛生研究所 松下 秀,工藤 泰雄,大橋 誠


Comparison between ELISA and other tests for detection of virulence





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