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Vol.7 (1986/8[078])

<国内情報>
感染性腸炎研究会報告 1985年 3.外国由来腸管感染症について(1)


 1985年に都市立伝染病院に収容された腸管感染症症例(腸チフス・パラチフスを含む)のうち,病原体陽性例は1,117例で,このうち,外国由来の症例は403例(36.1%)を占めた。その男女比は2.2:1で男性が女性の約2倍であった。年齢分布(図1)をみると,20〜30歳代の青壮年層に集中し,また,月別では(図1),春夏の休暇の季節に一致する3〜4月および8月に患者が特に多く,ともにこれまでの報告とほぼ同じである。

 この403例から分離された495株について各病原体ごとに推定感染国との関係を調査した(表1)。

 外国由来株のうちもっとも多数を占めたのは,Shigellaの276株で,この年に分離されたShigella総株数の実に60.4%を占めた。最近は外国由来株でもS.sonneiの増加が目立ち,S.soneiの総分離株数の半数を超えた(56.2%)。S.dysenteriaeS.boydiiは依然としてほとんどが外国由来である。

 Salmonella spp.では,S.typhiの外国由来株は20株(34.5%)で,まだ腸チフスの国内感染の多いことが知られるが,S.paratyphi Aでは外国由来株の割合が71.4%と著しく高い。その他のSalmonellaは外国由来株が意外に少ない。Campylobacter jejunicoliも同じく外国由来株は少ない。

 病原性大腸菌(EPEC)は25株で,外国由来株の割合は67.6%と過半数を占めた。ただし,各病院検査室ではenterotoxigenic Escherichia coliの検出が不十分で,この中にはあまり含まれていない。

 外国由来症例から分離されたVibrio cholerae O1は13株で,92.9%を占めた。また,Entamoeba histolyticaは外国由来株はむしろ少なく(36.7%),近年は国内感染,特に男性homosexual間の感染例の増加が注目されている。Giardia lambliaが検出された15例はすべて外国由来の症例である。



感染性腸炎研究会参加都市立14伝染病院(市立札幌病院南ヶ丘分院,東京都立豊島病院,同駒込病院,同墨東病院,同荏原病院,川崎市立川崎病院,横浜市立万治病院,名古屋市立東市民病院,京都市立病院,大阪市立桃山病院,神戸市立中央市民病院,広島市立舟入病院,北九州市立朝日ヶ丘病院,福岡市立こども病院・感染症センター)に1985年に収容された感染性腸炎症例による。



感染性腸炎研究会(会長 斉藤 誠)
天野 冨貴子(名古屋市立市民病院)
松原義雄(東京都立豊島病院)ほか


表1.外国感染例(403例)から検出された病原体と推定感染国
図1.外国由来腸管感染症の年齢と入院月





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