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1981年〜1985年に眼から分離され,現在までに報告されたウイルスは計2,094株で,アデノウイルスが1,920株(92%)と大部分を占め,これ以外はエンテロウイルス85株(4%),HSV82株(4%),その他7株である。
年次別にみると,1983,84年はこの年の咽頭結膜熱と流行性角結膜炎の流行(図1)を反映して報告数が急増した。ウイルス型別にはアデノ3,4,8,19型が多かった。また,最近アデノ37型が型別可能となり報告されるようになった。急性出血性結膜炎の原因であるエンテロ70は1980年の流行以後検出数が減少し,1984年以後分離されていない。これに対し1985年に沖縄で発生した急性出血性結膜炎の流行でコクサッキーA24が初めて分離されている。この流行は1985年1年間の急性出血性結膜炎患者全国発生数14,322人中,沖縄県が9,950人(69%)を占めるほど大きく,図1にみるように10月に鋭いピークを示した。また,角・結膜炎患者の眼材料からエンテロ70またはコクサッキーA24以外に多種類のエンテロウイルス(コクサッキーB2,3,5,エコー3,5,6,9,11,30)がそれぞれ少数ではあるが分離されているのが注目される。HSVは型別されたものはすべて1型である(表1)。
月別にみるとアデノ及びエンテロの検出は夏がピークであるがこれ以外の季節でも年間を通じ検出される(表2)。
年齢分布は0〜9歳と20〜39歳の年齢群に二峰性のピークがみられる(表3)。
眼からウイルスが分離されたものの臨床症状としては,報告された1,647例中1,611例(98%)に角・結膜炎がみられるほか発熱217例(13%),リンパ節腫脹178例(11%),上気道炎130例(8%)など,一般的にアデノ感染症およびエンテロ感染症に共通した全身症状が報告されている(表4)。
臨床診断名の記載された例について検体の種類別にみると,咽頭結膜熱と診断された642例中,鼻咽喉材料からの分離が469例(73%)に対し,眼からの分離は177例で,多い順にアデノ3,4,19などである。流行性角結膜炎では眼からの分離が913例中902例で,順位はアデノ4,8,3,19,37,11などである。アデノ4型が8型より多いのが注目される。急性出血性結膜炎と診断された73例では70例(96%)が眼から分離され,この中にはエンテロ70またはコクサッキーA24だけでなく,アデノ3,4,19などが含まれている。このように,臨床診断からは必ずしも分離ウイルスの種類は特定できないので,原因ウイルスを検索する際に注意が必要である。
図1.一定点医療機関当たり眼科疾患患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.眼からの年次別ウイルス検出状況(1980〜1986年)
表2.眼からの月別ウイルス検出状況(1981〜1985年)
表3.眼からウイルスが検出されたものの年齢分布(1981〜1985年)
表4.眼からウイルスが検出されたものの臨床症状(1981〜1985年)
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