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1986(昭和61)年1月,愛知県小牧市で1歳を中心に突発疹様発熱性発疹症が多発,Cox.A9が高率に分離された。従来原因不明で臨床的に突発疹と診断されていたものの中に既知のウイルスによるものがあることが明確になった。Cox.A9は本県では1982年,84年にも発生しており,今回の発生を発端にした周囲への流行を追跡調査したが,その後発生をみていない。
5月に発生したエコー7型感染症は6月に入り増加,臨床症状は髄膜炎,高熱を伴う咽頭炎,発疹症など多彩であり,中でも新生児髄膜炎や乳幼児の二峰性発熱に麻疹様発疹を伴うものが注目された。年齢的には新生児期から2歳未満が全体の68%を占め,15歳以上のものからは分離されていない。1975(昭和50)年調査の本県年齢別抗体保有状況からは現在20代前半と14歳以下に感受性者の蓄積が示唆され,その後の定点観測でも昭和50年代を通じ散発的に分離されているが,今回のような多発はみられていない。今後,臨床的には乳幼児,特に新生児期の感染に注意すると同時に,これまでにない臨床症状を呈するものが多い点でこれがウイルスの毒力の変異かどうかウイルス学的検討がぜひ必要と思われる。
愛知県衛生研究所・ウイルス部
月別ウイルス分離(愛知県,1986年7月31日現在)
疾患別ウイルス分離(愛知県,1986年7月31日現在)
Echo7型ウイルスに対する年齢別中和抗体保有率(愛知県,1975年調査)
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