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Vol.7 (1986/11[081])

<国内情報>
感染性腸炎研究会報告 1985年 6.過去10年間(1975〜1984年)の集団赤痢について(2)


 前号にひきつづき,感染性腸炎研究会に所属する都市立14伝染病院および埼玉県衛生研究所が関与した1975年以降10年間の集団赤痢の疫学的観察について述べる。

 赤痢菌が検出された集団の主流をなす菌型はソンネ赤痢菌が圧倒的に多く(表1),最近の全国傾向と変わらなかった。これらのうち,2件では他の赤痢菌型が少数に,また1件ではサルモネラおよびプレシオモナスが同時に多数検出された。これら3件のうち,2件は輸入例群の事例である。

 検出菌の主要な耐性パターン(表2)では1979年からはアンピシリンの耐性が,また83年からはカナマイシンの耐性が加わったことが特長である。なお,罹患人員107名,終息までに60日を要した地域発生群の1事例では,流行の途中からナリジクス酸耐性が加わったこともあって,分離された99株の感受性検査の結果では,耐性菌の94株はT:55株,TP:20株,TN:15株,N:3株,CTPA:1株と多彩な耐性パターンを示した。

 要約:(1)最近の赤痢については,ともすると輸入例の増加に目をうばわれがちであるが,輸入例は一般に母集団も小さく,検疫所あるいは保健所の防疫活動のため大規模発生には至っていない。(2)大流行は初期の患者発見の遅れや,水系感染によるものが多かった。(3)1つの集団についても患者の居住地は多くの都道府県にまたがることが多くなり,従って防疫上各道府県は緊密な連繋を要する。などが指摘される。これらの事実とあいまって,厚生省の統計でも毎年の集団発生による患者数は届出患者数の30%前後,多い年では半数以上を占めており,以上の点から防疫上集団発生は今なおないがしろにできない問題である。



感染性腸炎研究会参加都市立14伝染病院(市立札幌病院南ヶ丘分院,東京都立豊島病院,同駒込病院,同墨東病院,同荏原病院,川崎市立川崎病院,横浜市立万治病院,名古屋市立東市民病院,京都市立病院,大阪市立桃山病院,神戸市立中央市民病院,広島市立舟入病院,北九州市立朝日ヶ丘病院,福岡市立こども病院・感染症センター)に1985年に収容された感染性腸炎症例による。



感染性腸炎研究会(会長 斉藤 誠)
清水 長世(東京都立荏原病院)
松原義雄(東京都立豊島病院)ほか


表1.検出された主な菌型
表2.主な検出菌の耐性パターン





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