HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.7 (1986/12[082])

<国内情報>
インフルエンザ予防接種について


昭和61年11月10日



 去る10月27日,東京都町田市で本年初めての集団かぜの発生が報告された。今年もこれからいよいよインフルエンザの流行シーズンを迎えることとなる。

 一方,最近,インフルエンザ予防接種の効果等について様々な意見があり,必ずしも正確でない理解により社会に不必要な不安が引き起こされている面がある。

 もとより,インフルエンザ予防接種のあり方については,将来に向けて検討すべき点があると考えられるので,厚生省の「インフルエンザ流行防止に関する研究班」の調査研究の結果を得て,当小委員会としても必要な検討を加えていくこととしているが,国民各位には,少なくとも次の点は正しく理解していただきたい。

 1.インフルエンザとその予防方法

 インフルエンザは,かぜ症候群のなかでも,全身症状と爆発的な流行を特徴とする急性伝染病であり,医療の発達した現在でも,なお超過死亡の大きな原因となっている。インフルエンザは,重症化すると肺炎のほか,稀ではあるが脳症,心筋炎等を引き起こすことが知られており,予防対策が後退すれば,これらの併発疾患の発症も含めて大きな社会的影響を及ぼすと考えられる。しかも,今のところ,インフルエンザに対する有効な予防手段は,ワクチン接種しかない。

 2.インフルエンザ予防接種の効果

 インフルエンザワクチンの接種を受けるとインフルエンザの感染を予防する効果があること,仮に感染したとしても症状を軽減する効果があることは,これまで多数の研究業績により十分証明されており,疑問の余地のない事実である。ただし,インフルエンザウイルスは変異を起こしやすく,ワクチンに用いるウイルス株と実際に流行するウイルス株との類似性の度合によっては予防接種の効果が減弱することがあるので,今後ともワクチン株と流行株を合致させる努力が必要である。

 3.今シーズンのワクチン

 本年4月には山形県等でAソ連型の新しい変異株が分離されているが,これは従来のAソ連型ウイルスに比べて抗原性が大幅に異なることから,今シーズン中に大流行するおそれがあり,このため,今シーズンのワクチンには,この変異株(A/山形/120/86(H11)株)を特に追加するという措置がとられている。

 4.インフルエンザ予防接種による副反応

 インフルエンザの予防接種には,昭和47年以降,副反応の軽減のための改良が加えられたHAワクチンが用いられており,以前のワクチンに比べ副反応,特に重篤な障害を残すような副反応の発生防止の上で,大幅に改良されている。



公衆衛生審議会 伝染病予防部会 インフルエンザ小委員会





前へ 次へ
copyright
IASR