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Vol.8 (1987/1[083])

<国内情報>
福島県におけるエコー30型および7型の流行について


1986年春から秋にかけて,無菌性髄膜炎(AM)の流行があり調査した結果,エコー30型と7型による同時流行であったことが確認されたのでその概要を報告する。

 1.患者発生状況

 福島県感染症サーベイランスによるAM発生状況を図1に示した。1〜3月までは,わずか4名であったが,4〜6月と増加し始め,7月には51名が報告された。8月以降減少に転じたが,10月までの延べ患者数は123名に達した。これらの患者の大部分は県南地区(郡山市周辺)からの報告であり,今回の流行は同地区を中心としたものと推定される。

 2.ウイルス分離

 今年4月から10月上旬までのサーベイランス検査定点からのエンテロウイルス分離成績を表1に示した。この中で今回検査したAM患者は95症例で,その年齢分布は0〜3歳が13名(13.7%),4〜7歳が62名(62.3 %),8〜11歳14名(14.7%),12歳以上6名(6.3%)であった。性別では男子が60名(63.2%),女子が35名(36.8%)であった。

これら95症例中ウイルスが分離されたのは,69症例からエコー30型,7症例からエコー7型の合計76症例(80.0%)であった。その内訳は咽喉拭い液90検体中61株(67.8%),髄液74検体中20株(27.0%),糞便72検体中53株(73.6%)であった。

なお,分離にはHeLa,RD-18S,Vero,MDCKの4種細胞を用いたが,分離できたのはエコー30型,7型ともにすべてRD-18S細胞からのみであった。

 3.血清診断

 上記95症例より21症例についてペア血清(大部分が7〜10日間隔であった)の採取ができたので,これらについて中和抗体価を測定した結果,エコー30型(Bastianni株)に対し7例に4倍以上の有意上昇が認められた。他の9例が2倍の上昇,5例には上昇が認められなかった。なお,エコー7型に対しては1例も上昇が認められなかったが,これらの患者中にはエコー7型が分離された症例は含まれていなかった。

 以上の結果より,今回の流行は,エコー30型とエコー7型の同時流行であったことが判明したが,AM流行の主流はエコー30型であったことが推測される。エコー30型については1983年に全国規模での流行が発生しているが,当時本県においては確認することができなかった。これらのことについては,今後血清疫学的な面からも調査をしてみたい。



福島県衛生公害研究所 本泉 健 猪狩 浩周


図1.福島県における無菌性髄膜炎の地区別発生状況(サーベイランス届出情報より)
表1.サーベイランス事業におけるエンテロウイルスの月別分離



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