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昭和61年12月,従来の「AIDS調査検討委員会」を発展的に解消し,「AIDS対策専門家会議」が発足した。AIDS患者の確認は上記専門家会議の下に設けられた「AIDSサーベイランス委員会」が行うことになった。
AIDS対策専門家会議
目的 (1) AIDS研究の連絡調整と体系的推進。
(2) 研究結果を踏まえて,対策推進に向けての専門家としての提言。
構成:塩川優一(順天堂大医),金井興美(予研),北村 敬(予研),栗村 敬(鳥取大医),島田 馨(東大医科研),曽田研二(横浜市大医),多田富雄(東大医),徳永栄一(日赤血液事業部),西岡久寿弥(北里研),林 裕造(国立衛試),久野吉雄(日本歯科医師会),日沼頼夫(京大ウイルス研),藤巻道男(東京医大),松田重三(帝京大医),宮本昭正(東大医),村瀬敏郎(日本医師会),山田兼雄(聖マリアンナ医大),吉田幸雄(京都府立医大)
AIDSサーベイランス委員会
目的 (1) 報告のあったAIDS症例および抗HIV抗体陽性症例の検討。
(2) 報告症例の追跡調査及び分析
構成:塩川優一,島田 馨,西岡久寿弥,曽田研二,南谷幹夫(都立駒込病院),宮本昭正,山田兼雄
AIDSサーベイランス委員会検討結果について 昭和61年12月19日
本日のAIDSサーベイランス委員会において,AIDSが疑われるとして報告された症例について検討した結果,新たに4名のAIDS患者を確認した。4名の患者の内訳は,血友病患者3名,その他の者(感染経路不明)1名である。その他の患者の詳細については以下のとおりである。
AIDSサーベイランス調査票概要
1.患者の概要
(1) 国籍:日本
(2) 年齢:37歳
(3) 性別:男性
(4) 現況:死亡
(5) 感染経路:不明
2.医学的所見:昭和61年4月頃より異常行動出現。6月に食欲不振,体重減少が出現し,内視鏡検査で食道カンジダ症の診断。その後肺炎を併発し,12月7日死亡。
白血球数(6,300〜13,000), 血小板数(22万9千/mm3),Th/Ts比(0.036),抗HIV抗体(陽性)。
3.委員会意見:AIDSの臨床診断の手引きおよび現在までのAIDSに関する学術的な知見をもとに検討した結果,本委員会はこの症例に対し,AIDSであるとの結論に達した。
4.防疫対策:患者は既に死亡しているので,今後感染源となることはない。地域住民に無用な混乱を起こすことのないよう,適切な対策を関係県に指示した。
女性AIDS患者の発生について 昭和62年1月17日
1.患者の概要
(1) 報告県:兵庫県(神戸市)
(2) 年齢:29歳
(3) 性別:女性
(4) リスクファクター:異性間性交(外国人男性等複数の男性との性的接触あり)
(5) 現況:カリニ肺炎にて入院治療中(1月20日死亡)
2.厚生省の対応
1)教育啓発活動の徹底強化
@室長通知「AIDS患者発生時等における留意点について」の周知徹底
A性的接触による感染の防止を重点とするパンフレットの作成
*ハイリスクグループとの性的接触・多数の相手との性的接触を避ける
*肛門性交等の異常な性交を避ける
*コンドームは予防に有効である。
B米国公衆衛生総監リポートの翻訳出版
Cその他の広報等の強化
2)相談窓口体制の充実強化:都道府県・指定都市職員を対象とした研修会開催(昭和62年3月13日(金))
3)検査体制の充実強化:抗体確認検査の実施できる地方衛生研究所の拡充(現在8地方衛生研究所整備,今年度中6地方衛生研究所整備,62年度中に全地方衛生研究所に拡充)
4)AIDS患者・抗体陽性者のサーベイランス体制の拡充強化:患者サーベイランスの強化および抗体陽性者サーベイランスの体制確立
5)兵庫県, 神戸市への指示
@住民に対するAIDS予防のための知識の普及・啓発
A相談窓口体制および検査体制の確立
B全保健所の相談窓口において住民の問合わせに対応
C 患者との性的接触が疑われる者,感染を心配する者に対して検査を受けるよう勧奨
(参考)
1. 米国における異性間性交による患者について
成人女性患者 1,882人中 518人(27.5%)
成人男性患者 25,961人中 542人( 2.1%)
成人患者 27,843人中 1,060人( 3.8%)
2. 相談窓口の設置状況(昭和61年10月1日現在)
一般窓口 行政庁 53
保健所 610
専門的窓口 医療機関 95
合 計 758
厚生省保健医療局感染症対策室
AIDSに関する対策及び調査研究の推進体制
AIDSサーベイランス体制
AIDS患者発生状況(昭和62年1月17日現在) 危険因子別・性別患者発生数および死亡者数
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