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Vol.8 (1987/2[084])

<国内情報>
AIDSに関する対策および調査研究の推進体制


昭和61年12月,従来の「AIDS調査検討委員会」を発展的に解消し,「AIDS対策専門家会議」が発足した。AIDS患者の確認は上記専門家会議の下に設けられた「AIDSサーベイランス委員会」が行うことになった。



AIDS対策専門家会議

目的 (1) AIDS研究の連絡調整と体系的推進。

    (2) 研究結果を踏まえて,対策推進に向けての専門家としての提言。

構成:塩川優一(順天堂大医),金井興美(予研),北村 敬(予研),栗村 敬(鳥取大医),島田 馨(東大医科研),曽田研二(横浜市大医),多田富雄(東大医),徳永栄一(日赤血液事業部),西岡久寿弥(北里研),林 裕造(国立衛試),久野吉雄(日本歯科医師会),日沼頼夫(京大ウイルス研),藤巻道男(東京医大),松田重三(帝京大医),宮本昭正(東大医),村瀬敏郎(日本医師会),山田兼雄(聖マリアンナ医大),吉田幸雄(京都府立医大)



AIDSサーベイランス委員会

 目的 (1) 報告のあったAIDS症例および抗HIV抗体陽性症例の検討。

    (2) 報告症例の追跡調査及び分析

構成:塩川優一,島田 馨,西岡久寿弥,曽田研二,南谷幹夫(都立駒込病院),宮本昭正,山田兼雄



AIDSサーベイランス委員会検討結果について 昭和61年12月19日

本日のAIDSサーベイランス委員会において,AIDSが疑われるとして報告された症例について検討した結果,新たに4名のAIDS患者を確認した。4名の患者の内訳は,血友病患者3名,その他の者(感染経路不明)1名である。その他の患者の詳細については以下のとおりである。

 AIDSサーベイランス調査票概要

 1.患者の概要

(1) 国籍:日本

 (2) 年齢:37歳

 (3) 性別:男性

 (4) 現況:死亡

 (5) 感染経路:不明

 2.医学的所見:昭和61年4月頃より異常行動出現。6月に食欲不振,体重減少が出現し,内視鏡検査で食道カンジダ症の診断。その後肺炎を併発し,12月7日死亡。

 白血球数(6,300〜13,000), 血小板数(22万9千/mm3),Th/Ts比(0.036),抗HIV抗体(陽性)。

 3.委員会意見:AIDSの臨床診断の手引きおよび現在までのAIDSに関する学術的な知見をもとに検討した結果,本委員会はこの症例に対し,AIDSであるとの結論に達した。

 4.防疫対策:患者は既に死亡しているので,今後感染源となることはない。地域住民に無用な混乱を起こすことのないよう,適切な対策を関係県に指示した。



女性AIDS患者の発生について 昭和62年1月17日

 1.患者の概要

 (1) 報告県:兵庫県(神戸市)

 (2) 年齢:29歳

 (3) 性別:女性

 (4) リスクファクター:異性間性交(外国人男性等複数の男性との性的接触あり)

 (5) 現況:カリニ肺炎にて入院治療中(1月20日死亡)

 2.厚生省の対応

 1)教育啓発活動の徹底強化

@室長通知「AIDS患者発生時等における留意点について」の周知徹底

A性的接触による感染の防止を重点とするパンフレットの作成

*ハイリスクグループとの性的接触・多数の相手との性的接触を避ける

 *肛門性交等の異常な性交を避ける

*コンドームは予防に有効である。

B米国公衆衛生総監リポートの翻訳出版

Cその他の広報等の強化

 2)相談窓口体制の充実強化:都道府県・指定都市職員を対象とした研修会開催(昭和62年3月13日(金))

 3)検査体制の充実強化:抗体確認検査の実施できる地方衛生研究所の拡充(現在8地方衛生研究所整備,今年度中6地方衛生研究所整備,62年度中に全地方衛生研究所に拡充)

4)AIDS患者・抗体陽性者のサーベイランス体制の拡充強化:患者サーベイランスの強化および抗体陽性者サーベイランスの体制確立

 5)兵庫県, 神戸市への指示

@住民に対するAIDS予防のための知識の普及・啓発

A相談窓口体制および検査体制の確立

B全保健所の相談窓口において住民の問合わせに対応

C 患者との性的接触が疑われる者,感染を心配する者に対して検査を受けるよう勧奨

(参考)

1. 米国における異性間性交による患者について

成人女性患者  1,882人中   518人(27.5%)

成人男性患者 25,961人中   542人( 2.1%)

成人患者   27,843人中  1,060人( 3.8%)

2. 相談窓口の設置状況(昭和61年10月1日現在)

一般窓口  行政庁    53

      保健所    610

専門的窓口 医療機関   95

合 計          758



厚生省保健医療局感染症対策室


AIDSに関する対策及び調査研究の推進体制
AIDSサーベイランス体制
AIDS患者発生状況(昭和62年1月17日現在) 危険因子別・性別患者発生数および死亡者数





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