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Vol.8 (1987/7[089])

<特集>
水痘


 日本では,水痘は毎年冬から初夏に患者発生が続き,9月を底にして夏から秋に谷となる(図1)。

 報告患者数および年令群別の患者報告数は毎年ほとんど一定し,0歳8〜9%,1〜4歳56〜61%,5〜9歳27〜32%,10〜14歳3%,15歳以上は1%未満で,9歳以下が大部分を占める(表1)。

 水痘の病原体である水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は初感染時水痘を起こした後潜伏感染し,再発症して帯状疱疹を起こす。したがって,VZVは水痘患者だけではなく帯状疱疹患者からも分離される。図2は水痘患者報告数と帯状疱疹患者報告数の両者を別個に集計している三重県感染症サーベイランスの成績である。帯状疱疹は水痘と関連なく年間を通じて患者が発生している。

 一方,ウイルス分離報告に関しては,通常,水痘が臨床診断が容易な疾病であるため,ウイルス検査は比較的特殊な例に限られるとみられる。表2は1981〜1986年に病原微生物検出情報に報告されたVZVの月別検出状況である。毎月少数であるが年間を通じて検出されている。この検出の約9割は民間検査所からの報告による。VZV検出例364例の年齢は0〜4歳37,5〜9歳29,10〜19歳20,15〜19歳13,20歳以上112,不明153で(図3),水痘患者の年齢分布を反映しない。これは帯状疱疹患者からの検出が多いことを意味する。VZV検出例のうち臨床症状の記載があった117例では水疱88,発疹18,発熱16,上気道炎5,リンパ節腫脹4,口内炎2,麻痺2,下気道炎・肺炎,髄膜炎,脳炎各1,その他の症状19であった。臨床診断名の記載のあった91例の内訳は帯状疱疹40,水痘20,髄膜炎,脳炎,感冒各1,その他28であった。

 VZVの検出はすべて培養細胞によるもので,検体の種類は364例中335例が皮膚病巣,これ以外は鼻咽喉15,髄液6,眼ぬぐい液1,その他剖検材料など4,不明3であった。

 1987年春から水痘生ワクチンの市販が開始された。当面このワクチンは自然感染を受けると重症となりやすい免疫不全児などハイリスク者に対して主に投与される。



図1.水痘患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年齢群別水痘患者報告数(%)(感染症サーベイランス情報)
図2.水痘患者発生状況と帯状疱疹患者発生状況(三重県感染症サーベイランス報告:三重医報第330号)
表2.水痘帯状疱疹ウイルス月別検出状況(1981〜1986年)
図3.年齢群別水痘帯状疱疹ウイルス検出状況(1981〜1986年)





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