HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.8 (1987/7[089])

<国内情報>
B型インフルエンザの小流行について−長崎県


 1987年5月18日,長崎県小浜保健所管内の南高来郡南串山町第一小学校でインフルエンザ様疾患により学級閉鎖したとの報告を受け調査を始めた。その後,離島の厳原保健所管内(対馬)でも,5月下旬に2校(中学校),6月中旬に1校(中学校)の集団発生が確認された。ところがこれらの集団発生例調査中に,以前にも頭痛,発熱等インフルエンザ様症状を呈する欠席者あるいは罹患登校者の多い2中学校(別々の保健所管内)があったとの情報が得られ,4月以降のもっと早い時期に,しかも県下各地で小規模のインフルエンザ発生があったのではないかとの疑いがもたれた。この様の未確認施設も含めた発生の規模等について表1に示した。

 表1の南串山町立第一小学校,厳原町立豆酘中学校についてはウイルス分離および血清学的検査を,美津島町立鶏知中学校については血清学的検査のみを実施した。その結果,第一小学校では10名中5名,豆酘中学校では10名中2名の患者含嗽水よりB型インフルエンザウイルスが分離された。ウイルス分離には発育鶏卵(9日齢)を用い実施したが,初代で分離されたものが2株,2代で分離されたものが5株であった。また,血清学的検査では,第一小学校では10名全てが,鶏知中学校では10名中6名が,豆酘中学校では10名中7名がB型インフルエンザウイルスに対して明確な抗体上昇がみられ,同型インフルエンザウイルスに罹患したものと推察された。

 分離ウイルスの性状は,1987/88シーズン用B型ワクチン株に決定されているB/茨城/2/85株に対して4〜16倍の差がみられた(表2)。また,患者のペア血清においてワクチン株および当初分譲株(B/長崎/1/87)を抗原としたHI試験でも,4〜8倍のHI抗体価の差が認められ,ワクチン株,分離株間での抗原性のズレが示唆された。

 今季のインフルエンザ発生施設間では地域的関連性は認められず,過去に発生したインフルエンザウイルスがヒトからヒトへ伝播され,この発生に結びついたものか,あるいは局地的に外部(たとえば外国等)から持ち込まれたものかは不明である。どのような経過で発生したものか,今後若干の疫学調査を実施したいと考える。

 なお,本日(6月30日)離島の有川保健所管内(上五島)の高校で,新たに集団発生があったとの報告を受けた。



長崎県衛生公害研究所 鍬塚 眞・熊 正昭


表1.インフルエンザ(様)集団発生状況
表2.分離株の性状





前へ 次へ
copyright
IASR