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Vol.8 (1987/7[089])

<外国情報>
妊娠時のヒトパルボウイルス(B19)感染:第5疾患に関するPHLS研究班中間報告−英国


 ヒト・パルボウイルス(B19)の胎児障害に関するこれまでの報告は流産などが発生した後に過去に遡って調査されたものばかりで,リスクを過大視している危険性がある。そこで,感染が確認(妊娠中にB19特異IgM抗体が検出)された妊婦について追跡調査を行った。妊娠の結果をフォローし,材料として胎児組織または臍帯血,咽頭ぬぐい液と胎盤を採取。IgM,IgGおよび抗原は抗体捕獲ラジオイムノアッセイで測定。B19DNAの検出はクローン化プローブを用いたdot hybridization法によった。出産児は1年後に一般健康状態,神経発育状況と血清検査値をチェックした。

 1985年1月1日から1987年3月10日までに160人が調査された。十分情報が得られた140人中発疹は128,発疹はないが関節痛とインフルエンザ様症状を呈した者6,他の6は無症状だが感染者と接触があった。一番頻度が高い感染源は自分の子供だった。1987年2月1日までに結果が判明した134人中出産109,死産1,自然流産または胎児死亡20,人工流産4であった。感染の妊娠週別流産は1〜9週が7/46(15%),10〜18週が11/66(17%),19〜27週0/13(0%),不明2/9であった。流産児10名中3名がB19DNAまたは抗原陽性,臍帯血検体2/84はB19IgM陽性,他に4が疑陽性を示した。現在までに1年後の再検査を受けた幼児16名についてB19特異的IgMが検出された者はいないが,5人に特異的IgGが検出され,このうち3人は臍帯血にB19特異IgMが検出された者である。しかし,明瞭な先天性欠損や異常が認められた者はいない。

 現在までの研究結果はパルボウイルスB19の感染を受けた妊婦は自然流産のリスクがわずかながら高いことを示唆する。しかし,さらに厳密な対照研究による確認が必要であろう。今までのデータでみる限り,経胎盤感染の率は低く(母親の感染の約10〜25%),また,出生児は幼児期に重篤な異常を示していない。当研究班は調査対象者が,200人に達するまで研究を継続し,その出生児全員について少なくとも1年間追跡調査をする予定である。

(CDR,87/20,1987)






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