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患者を看病してHIVに感染したとみられる例は今まで6例報告されている。このうち4名は針の刺傷事故,2名は家で患者を看病した主婦と母親である。今回さらに3例が報告された。第1例は動脈カテーテル挿入を補助した女性が素手で20分間血液に触れた。20日後に発熱,体重減少,全身リンパ腺腫。血清のHIV抗体は事件8ヶ月前(−),16週後(+)となった。第2例は患者の動脈切開をした女性技師が顔と口に血液を浴び,すぐ洗い流した。手袋と眼鏡をしていた。血中抗体は翌日および8週後(−),9ヶ月後(+)となった。事件2ヶ月後,HIV感染不明の薬物常用者の注射針で刺傷事故を経験している。同時に血液を浴びた1人は1年後も(−)。第3例は,女性技師が分離作業中血液をこぼした。手袋は着用せず,手に傷はなかったが耳の皮膚炎に触れたかもしれない。HIV抗体は5日後(−),8週後発熱,発疹,3ヶ月後抗体(+)となった。
注射針または血液接触によるHIV感染危険度は非常に低く,CDCの調査結果では1,097事故例中969(89%)は針等の刺傷事故,70人は傷口を,58は粘膜を血液に暴露したが,抗体陽転は1例のみである。また,NIHおよびカリフォルニア大学の同様の事故例(それぞれ332および63例)でいずれも陽転例はない。医療従事者は勧告を守り,手袋をつけ,汚染された後すみやかに洗浄することで危険を最小限にすることができるはずである。
(CDC,MMWR,36,19,1987)
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