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1987年3月28日〜4月7日に4人がBウイルス(Herpesvirus simiae)感染で入院した。同一機関の実験サル取扱者3人およびその妻である。
第1例は3月4日,両眼結膜炎と下痢を呈した3歳のRhesus monkeyに咬まれた31歳男性飼育係で,事件5日後咬まれた左腕がしびれ,18日後,嗜眠,熱,めまい,筋痛を発症,3月28日に入院,Bウイルス抗体陽性(酵素抗体法で32倍),髄液にBウイルス陽性。レスピレーター装着,アシクロビル,のちにDHPG静注を行ったがほぼ昏睡状態が続いている。第2例は3月10日,多分上記と同一サルに咬まれ,5日後咬傷部位にヘルペス様水疱を生じ,上記と同様の経過で3月28日入院,Bウイルス検出。入院1ヶ月後死亡。
第3例は3月11日,サルを扱った実験主任が咬まれたおぼえはないが16日後指に水疱を生じ,Bウイルス陽性のため4月10日より10日間アシクロビル静注,その後経口投薬を怠ったところ結膜と口腔粘膜のルチン検査でウイルス陽性となり,再びアシクロビル静注により5月8日,直腸以外はウイルス陰性となった。この間,患者は無症状であった。第4例は第2例の妻。夫の傷と同時に自分の指の皮膚炎に同じクリームを塗った。Bウイルス陽性。4月1日以降アシクロビル経口投与,のちに静注。その後傷は進行せず,4月10日のルチン検査で結膜がウイルス培養陽性,結膜炎はなく28日以降陰性。全身性症状はないのでコンタクト挿入時の自己接種かもしれない。
関係者49例の調査で他に感染はみられていない。本ウイルスが1930年代にみつかって以後,文献的記載は23例で多くはないが,感染の経過は重篤で脳炎により18例が死亡している。不顕性感染の頻度は不明。
(CDC,MMWR,36,19,1987)
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