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Vol.8 (1987/7[089])

<国内情報>
感染性腸炎研究会報告 1986年


1.感染性腸炎起因菌の分離状況



 感染性腸炎研究会では,毎年14都市立伝染病院に入院した感染性腸炎症例について集計成績を報告しているが,今回は1986年についてである。

1.病原体検出状況(表1)

 1986年の入院総数は1,302で,前年までと特に変わりなく,検出病原体は病院の性質上Shigella spp. が最も多く33.9%(441例),S. typhi,S. paratyphi Aを除くSalmonella spp. は11.8%(153例)であり,この2つの菌属による症例はこの5年間ほぼ同頻度である。Vibrio parahaemolyticusは従来5〜6%を占めていたが,86年は4.7%(60例)でやや減少している。病原大腸菌(EPEC,EIEC,ETEC)は3.1%(41例)であった。Campylobacter jejuni/coliは1981年から全施設で検査が行われるようになり,翌82年が12.5%で最も高率であったが,その後入院例は徐々に減少し,86年は8.1%(105例)であった。出血性薬剤関連腸炎の指標としているKlebsiella oxytocaの検出例も,最も多かった82年の1/3に減少している(2.1%)。一方,84年から上記以外の病原体による症例が増えており,86年は15.4%(201例)であった。この中にはV. cholerae O1およびnon O1, Aeromonas hydrophila, A. sobria, Plesiomonas shigelloides, Entamoeba histolytica, Giardia lamblia, Rotavirusなどが含まれている。

2.主要病原菌の疫学的背景

 年齢分布(図1):全体的には海外感染例を中心とする20〜30代の症例と国内感染の小児例に二分される。C. jejuni/coliは2峰性,V. parahaemolyticusは青壮年に多く,Salmonellaは小児に多いことは従来通りであるが,青壮年に圧倒的に多かったShigellaが小児例の増加でC. jejuni/coliに近い様相を呈しているのが86年の特徴である。これは小児を中心とした集団発生の影響と考えられる。

 季節的変動(図2):冬に赤痢の集団発生があったため,春夏冬の各休みに患者が増える従来の型が崩れている。SalmonellaC. jejuni/coliは通年性,V. parahaemolyticusは夏季集中型で例年と同様の傾向である。

3.Shigellaの流行菌型(図3)

 最優位菌型は1965年および73年の二度にわたってB群とD群の交代があり,81,82年に相半ばした後,83年から再度D群が優位となっている。A群,C群は少数ながら常に分離されている。

*感染性腸炎研究会(会長:中谷林太郎)参加都市立14伝染病院(市立札幌病院南ヶ丘分院,東京都立豊島病院,同駒込病院,同墨東病院,同荏原病院,川崎市立川崎病院,横浜市立万治病院,名古屋市立東市民病院,京都市立病院,大阪市立桃山病院,神戸市立中央市民病院,広島市立舟入病院,北九州市立朝日ヶ丘病院,福岡市立こども病院・感染症センター)に1986年に収容された感染性腸炎症例による。



東京都立豊島病院 相楽 裕子


表1.感染性腸炎入院患者(含保菌者)数と病原体検出頻度(1982〜1986年)
図1.病原菌別年齢分布(1986年)
図2.月別・病原菌別患者数(1986年)
図3.Shigella流行菌型の年次分布(1977〜86年)





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