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わが国におけるA群レンサ球菌感染症の発生は夏に最も少なく,秋から冬にかけて主要なピークを生じ,春から初夏にかけて第2のピークを生ずる二峰性の年間変化を示す傾向があった。しかし,1985年と1986年には冬季のピークがさらに二峰性を示すようになったために従来のパターンがくずれ,三峰性の患者発生パターンをとる傾向がみられた(図1)。患者の年齢分布は毎年かわりがなく,5〜9歳が約半数,1〜4歳が約4割を占め,学童・幼児が中心である(表1)。学童・幼児が集団生活を離れる夏,冬,春休みと,患者発生パターンとの関連は興味深いところであるが,今後詳細な解析が必要であろう。
A群レンサ球菌検出状況を年次別にみると,地研・保健所集計では主要菌型であるT-12型が1980年をピークとし,1986年まで減少を続けている。これに対しT-3型が1983年から急増し,1985年にはT-12型を上回る検出数が報告された(図2)。医療機関集計でも同様に,1985年にはT-3型が最も多かったが,1986年には再びT-12型が多数報告された。
医療機関における月別のA群レンサ球菌総検出数は患者発生パターンをよく反映して三峰性を示している。菌型分布に関しては,医療機関では群別のみ実施しているところがほとんどで,1986年に報告されたA群レンサ球菌10,142株中型別が報告されたのは492(5.1%)であった。これらは富山,福井,山梨,大阪,広島の5府県から報告された。各県ともにT-12型が最も頻度高く,次いでT-3,4型が多かった。
地研・保健所では,1986年に検出された2,124株中2,108株(99.2%)の型別が報告された。T-12型が最も多く,7月と11〜12月をピークとして検出された。これに対しT-3型は3月をピークとして検出され,流行時期によって流行菌型の入れ替わりがみられる(図3)。また,地域によってはT-12型よりT-3型の検出数が上回ったところがあり(青森,福島,埼玉),流行菌型に地域差がみられる。
(1986年の解析の詳細は2ページ参照)
薬剤耐性頻度についてレンサ球菌感染症研究会の分担研究として都衛研で実施された成績によると(表2),TC耐性菌は1983年以降,CPおよびOL耐性菌は1981年以降,急激に減少している。また,T-12型に多かった多剤耐性菌は1986年には1.4%にまで減少し,T-3,T-6型に多かった2剤耐性菌も減少傾向にあるが,T-4,T-12型を主とするTC単剤耐性菌は減少しなかった(都衛研・柏木らの報告による)。
図1.溶連菌感染症患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年齢別溶連菌感染症患者発生状況,1986年(感染症サーベイランス情報)
図2.年次別型別A群レンサ球菌検出状況,1979〜1986年(地研・保健所集計)
表2.臨床材料由来A群溶連菌の耐性株分離率の年次的動向(1975〜1986年)
図3.月別A群レンサ球菌検出数(1986年)
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