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感染症センターはAIDSサーベイランスの1つに職業的暴露事故の報告を収集している。報告は厳重に秘密とし,本人の了解のもとで電話または手紙による。名前は要求されずコードを使用して重複を避けた。検査はセンターでなされた。
1986年1〜12月に150人の暴露(男41,女109)が報告された。63%は4テームズ地域(AIDS患者が多い)の病院で発生した。職業別はナース91,医師32,検査室員2,その他19である。針の刺傷および鋭利なものによる傷が76で,このうち60はナースと医師である。暴露の状況は飛沫24,エアゾール5,その他45であった。血液への暴露例が101,尿24,残りは唾液,吐瀉物,便,膿,腹水,汗などであった。手術時骨片を刺した1外科医,ナースでは膿瘍切開の小刀で切った,口による人工呼吸を行った,唾液を浴びた,患者にかまれた例が報告された。109人は1年以上,41人は1〜12ヶ月観察したが,まだ抗体獲得者は報告されていない。
調査結果は,使用後の針の再キャップは危険であり,さらに暴露者のHIV感染のリスクは1%以下で,同様の状況下でのB型肝炎よりはるかに低いことを示した。AIDS/HB混合感染者からの針刺傷事故でHBに感染したが,15ヶ月後までHIV感染は証明されていない例がある。
世界中で7例の職業上のHIV感染が記録されているが,AIDS発症例はまだない。疑われる抗体陽性例が4例あるが,いずれもベースラインの血清が得られていない。これらはデンマークの女性外科医がザイールのKinshasaで頻回暴露ののち,1977年AIDSで死亡;針刺傷事故のあった米国の病院職員のAIDS死亡例;2回の針刺傷事故歴のある米国の女性医療従事者の抗体陽性例;数回傷を暴露した米国の男性検査室員の陽性例である。
医療従事者でなく,家族内暴露と考えられる抗体陽性例がある。ドミニカの少年が抗体陽性の兄弟に使用した注射器によるビタミン注射で陽性;血友病児の母親;死亡した兄弟に多分かまれた少年;皮膚疾患のある英国婦人が患者を看病した後発症。特に最後の場合は感染に対する知識が皆無だったので,病院の例とは全く異なる事情にあった。
(CDR,87/24,1987)
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