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Vol.8 (1987/10[092])

<国内情報>
山口県の一中学校における溶血レンサ球菌感染症の集団発生事例


 山口県O中学校(生徒数973名)において溶血レンサ球菌による咽頭痛,頭痛,発熱を主徴とする疾患が多発したのでその概要を紹介する。

 1987年6月15日,O町役場から山口保健所にO中学校でカゼ様疾患が多発し,208名が欠席しているとの届け出により事件が探知され,ただちに調査を開始した。

 1.アンケート調査成績(回収率 生徒:97.5%・949/973,職員:75.0%・36/48)

 1)患者発生状況:生徒の患者発生率は1年が81.8%,2年が62.8%,3年が87.3%で平均77.2%,職員が66.7%であり,発生率の高いことが注目される。日別患者発生状況は図に示すように,6月13日に急増,14日をピークに15日まで多発し,16日には激減,13〜15日の3日間で総患者発生数の69.4%を占める一峰性の発生パターンを示し,単一暴露による感染が示唆された。

 2)臨床症状:主症状は咽頭痛が92.2%,頭痛73.1%,発熱(38℃前後)65.8%であり,その他に腹痛20.1%,下痢5.7%といった消化器系の症状も若干見られる。これらの症状は2〜6日間で消失したものが多い。

 2.病原体および保菌検索

 当初カゼ様疾患として届け出されたことからウイルス検査に主眼が置かれ,届出と同時に患者10名のうがい液,便および血液が採取されたが,調査が進むにつれて症状から細菌性,特に溶血レンサ球菌感染症も疑われるようになってきた。その後,患者を診察した医師から溶血レンサ球菌を検出(迅速試験)したとの情報等を加味して,O町内の4医院へ血液寒天培地を配布し,第1回目(6月16日)の回収培地6検体中5検体(陰性の検体は抗生物質投与中)から溶血レンサ球菌を分離し,本疾患の原因菌として浮かび上がってきた。そこで本疾患との関連をさらに追求する目的で,6月17日,各学年1クラスと職員の咽頭ぬぐい液を検査し,1年27.3%(12/44),2年35.3%(12/34),3年56.4%(22/39),職員42.5%(17/40)の検出率であった(抗生物質投与中を含む)。

 なお,患者および保菌者から検出された溶血レンサ球菌はすべてA群T-1型であった。また,患者10名(9名は溶血レンサ球菌陽性)のペア血清をBLUE-ASO(富士レビオ)で抗体価測定をおこない,8名は2〜5管の上昇(急性期80〜320,回復期320〜2,560)が認められた。なお,ウイルス検査においてウイルス性疾患は否定された。

 3.感染源調査

 患者の発生状況から単一暴露による共通感染が考えられ,汚染源として学校のプール,飲料水,牛乳,給食等が疑われた。特に最も疑われる給食は給食センターで調理され,小学校とほぼ共通の献立になっているが,小学校に患者発生のないことから,中学校のみに供されたギョウザ(8日献立),コーヒーゼリー(9日),めざし(11日),うどん(12日)が注目され,これらのうちギョウザを除く検査,牛乳および調理従事者の咽頭ぬぐい液の菌検索をおこなったが,いずれも溶血レンサ球菌を検出することはできなかった。

 これらの調査結果を総合すると,本疾患は共通感染源は不明であるが,臨床症状も溶血レンサ球菌感染像と一致することから,A群T-1型による溶血レンサ球菌感染症と結論づけられた。



山口県衛生公害研究センター 片山 淳
山口県山口保健所


 生徒の日別患者発生状況





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