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日本で紅斑熱群リケッチア症の患者が初めて確認されたのは,徳島県(1979年5月)であり,その後内田教授(徳島大学医学部ウイルス学教室)により,高知県室戸市においても同様の疾患の存在が報告され,病原リケッチアの分離にも成功した。
千葉県衛生研究所では1982年以降,つつが虫病の血清学的診断を行っている。本県での発生時期は,主として10月から翌年3月にかけてであるが,1987年7月,つつが虫病様症状を呈する患者血清(県南部天津小湊町在住の女性)について検査依頼があった。患者の臨床所見は,刺し口を有し,37.6〜40.0℃の発熱が10日間ほど続き,発疹はあったがリンパ節腫脹は認められなかった。これらの臨床所見は,一見つつが虫病のそれと類似していた。R. tsutsugamushi抗原であるKato,Karp,Gilliam株を用い,急性期および回復期血清についてIFA testを行ったが,両血清ともIgM,IgG(1:10倍以下)陰性であり,つつが虫病は否定された。患者発生時期が千葉県におけるつつが虫病のそれと異なることから,四国で発見された紅斑熱ではないかと推定され,徳島大学内田教授より分与を受けた紅斑熱群リケッチアであるR. montana株を用いてIFA testを行った。急性期血清は,IgM,IgGともに1:20倍以下であったが,回復期血清ではIgM1:320倍,IgG1:640倍を示した。この結果,この女性はペア血清で明らかな抗体上昇が認められ,千葉県初の紅斑熱群リケッチア症患者であることが確認された。以上,千葉県にも,四国および宮崎県同様紅斑熱リケッチア保有のVectorが生存するものと考えられる。(今後の県内における紅斑熱リケッチアの浸淫状況を把握する目的で,現在徳島大学医学部内田孝宏教授と共同研究中である。)
千葉県衛生研究所 時枝 正吉 海保 郁男
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