HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.8 (1987/12[094])

<特集>
インフルエンザ 1986−1987


 日本では1986年春から夏に,主に関東,東北,北海道で例外的に大きいインフルエンザの流行がみられた。分離されたウイルスはいずれもAソ連(H1N1)型で,この型はこの夏季の流行を前駆流行として11月以降再び全国的に拡がり,1986/87シーズンの流行株となった。しかし,この年の流行の規模は例年より小さく,厚生省感染症対策室に報告された学校等における集団発生患者数は,最近では過去最低であった1978/79年のA(H1N1)流行よりもさらに低くなった(図1)。

 ウイルス分離は3〜7月に13都道府県市から合計181株が報告されたのち,後半は11月東京に始まり,1月がピークで,3月までにほぼ全国から合計1,118株が報告された(表1)。分離ウイルスはいずれもこの年のワクチン抗原に追加されたA/山形/120/86(H1N1)と抗原的にほぼ同一型であった (本月報第8巻参照)

 この流行の終了後,87年5月,再び初夏に今度はB型が出現し,5月に高知,長崎,熊本,鹿児島の4県から13株,6および7月に熊本から3株の分離がいずれも小・中学校の集発で報告された (本月報第8巻参照)。 抗原分析の結果,分離株はワクチン株に対し抗原的差異を示した(表2)。

 インフルエンザウイルスの分離数をみると,日本では過去数年間,A香港型,Aソ連型,B型の順にきわめて規則正しく3年おきに流行し(図2),しかも多くの場合,流行前シーズンの後半または終了後に少数分離される株が流行の主流となっている。このような流行状況,抗原の変異などから,B型新分離株が次シーズンの流行株となることが予想されたため,前年と同様の経過で,1987/88シーズンのワクチン抗原としてB/長崎/1/87が追加された。

 前シーズンのA(H1N1)の分離が報告された年齢(表3)は学童が最も多く,中学生以下が72%を占めるが,成人についても全年齢から幅広く分離が報告されている。5月以降,B型が分離された年齢はいずれも小・中学生である。インフルエンザウイルスが分離された例について報告された臨床症状を表4に示した。



図1.インフルエンザ様疾患患者発生状況(インフルエンザ様疾患集団発生報告週報・厚生省感染症対策室)
表1.月別インフルエンザウイルス検出状況(1986年1月〜1987年11月)
表2.1987年4月〜7月に分離されたB型株の抗原分析
図2.月別インフルエンザウイルス検出状況(1981年1月〜1987年11月)
表3.インフルエンザウイルス分離例の年齢分布(1986年1月〜1987年11月)
表4.インフルエンザウイルス分離例の臨床症状(1986年1月〜1987年11月)





前へ 次へ
copyright
IASR