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1987年のヘルパンギーナの流行は立ち上がりが早く,5月末に九州から始まり,6月には四国,中国,近畿と北上する一方,東北でも流行が始まった。そして中だるみの形をとった後,7月に東日本に拡がって終った。このため,地域別にみると流行のピークが20週〜31週に分散した。全国的な患者発生状況は図1のようにコクサッキー(C)A10型が大流行した1984年以外は毎年ほぼ同規模の流行を繰り返している。
1987年にヘルパンギーナと診断されたものから検出されたウイルスは586で,CA4,5型が上位を占めた。この両型とも検出数全体の79%がヘルパンギーナと診断されている(表1)。この他には1987年に流行したコクサッキーB3分離例448中39例がヘルパンギーナと診断された。また,CA10およびCA8が増加しており,1988年の流行の可能性が示唆される
(本月報8巻6号参照)。
CA10は1984年に大流行した後,1985〜86年には検出数が少なかった。CA8は本システムを開始した1979年に総検出数で32例報告されたのが最高で,1983年以降の年間総検出数は0〜3である。
ヘルパンギーナ患者からのウイルス検出状況を月別にみると,CA4は6月,CA5は6,7月,CB3は8月をピークとして検出された(表1)。地域別にみると,CA4,5はおおむね各地域の流行のピークと一致して同時期に重なって検出されている。CA4は30県市,CA5は15県市で検出された。CB3は東京17,京都7など10県市で,CA10は秋田14,神奈川8など9県市で,CA8は鳥取15など5県市で検出された。
年齢別にみると,CA4,5,10,CB3はどの型も1歳の検出報告が最も多く,4歳以下がそれぞれ84〜97%を占めた。8年ぶりに増加したCA8は1〜4歳が59%,5〜6歳が27%を占めた(表2)。
ヘルパンギーナ患者の臨床症状は発熱がCA4検出例の55%,CA5検出例の36%,CB3検出例の44%,CA10検出例の65%,CA8検出例の86%に,上気道炎がそれぞれ24%,16%,26%,48%,59%に報告された(表3)。
検体の種類をみると,ヘルパンギーナ患者586例中550例は鼻咽喉から,58例は便からウイルスが分離された。型別では,CA4は272例中254例,CA5は99例中95例,CB3は39例全例,CA10は31例中28例,CA8は22例中21例が鼻咽喉材料から検出された。
検出方法は培養のみで,CA4,5,10,8は動物(乳のみマウス)で各246,95,26,22例,細胞で各35,4,5,2例分離され,CA以外は細胞で分離された。
1988年5月末まで,ヘルパンギーナ患者からのウイルス検出報告は単純ヘルペス5例(1月2例,4月3例)のみで,まだ流行の動きはとらえられていない。
図1.ヘルパンギーナ患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.ヘルパンギーナと診断されたものからの月別ウイルス検出状況(1987年1〜12月)
表2.ヘルパンギーナと診断されたものからの年齢別ウイルス検出状況(1987年1〜12月)
表3.ヘルパンギーナと診断されたものの臨床症状(1987年1〜12月)
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