HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.9 (1988/9[103])

<国内情報>
不明発疹症からのエコーウイルス18型(E18)の分離−北九州市


 今年の春から夏にかけて,非水泡性の斑丘疹を示す発疹症が,乳幼児を中心に散発流行した。この疾患の臨床所見は,顔,躯幹,手足の斑丘疹が特徴的で,発疹は通常2,3日,長くても1週間で消失し,発熱はなしか,あっても軽度であった。症状としては一般に軽症で,既知の発疹症とは異なっているため,不明発疹症と診断された。病原としてウイルスが想定されたため,その原因の検索を試みた。

 検体として4月下旬から7月中旬にかけて,発病初期の患者13名の咽頭拭い液と便(24検体)とペア血清1名分を採取した。ウイルス分離には,Hela,FL,BGM,RD‐18Sを用いた。RD−18Sでは16検体,BGMでは12検体に,初代ないし2代目でCPEがみられ,HeLa,FLでは2代継代後もCPEがみられなかった。CPEはエンテロウイルスに特有の細胞収縮で始まり,判別は容易であったが進行は緩やかであった。BGMでRD‐18Sに比べ,CPEの出現がやや遅れる傾向があった。分離株は市販の抗血清を単味で用いた中和試験により,表に示すとおりすべてE18と同定した。

 E18が検出されなかったNo.4,5,6の患者は発疹の出現と所見は他の患者と同じであったが,その他の症状として高熱,咳,鼻汁がみられた。また,No.6の患者のペア血清の中和抗体価は,急性期,回復期とも陰性であった。したがってこの1名は血清学的に,他の2名は臨床症状からE18以外の原因による発疹症と考えられた。

発疹症の原因ウイルスが多彩であることを考えると,E18以外の原因も当然考慮しなければならないが,3ヵ月にわたり13名中9名からE18が分離されていることから,これが今回の不明発疹症の原因と考えられた。



北九州市環境衛生研究所 下原 悦子,梨田 実,杉嶋 伸禄
佐久間小児科医院 佐久間孝久


表.不明発疹症のウイルス分離結果





前へ 次へ
copyright
IASR