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日本における百日せきは1975年のワクチン接種中断,およびその後のワクチン接種率の低下によって,患者が著しく増加した(図1)。その後ワクチン接種率の回復,さらに1981年秋からは改良ワクチンの採用によって患者数は減少している。
感染症サーベイランス情報の百日せき様疾患患者発生報告数は1982〜83年は4〜5月と8〜9月にピークがみられたが,その後患者発生が減少するとともにピークはなくなり,一定点当たり年間患者報告数は1982年12.59,1983年10.97に対して1984年〜1987年には半減(5.51,4.38,6.02および4.91)し,1988年は48週までの累積で一段と減少し2.69となった(図2,3)。
患者の年齢は1歳以下が半数を占め,この年齢群でワクチン未接種者が多いことを反映している。また,全体の患者数が減少しているのに対し,10歳以上の患者数は微増し,相対的に10歳以上の占める割合が増加傾向にある(図4)。
地域的比較のために例として都道府県別に突発性疹患者数(地域的,年次的に変動が小さい)に対する百日せき様疾患患者数の比率を求め,年次別に図5に示した。地域によって集団接種,対象年齢,接種率などに差があることが示唆される
(本月報98号参照
図)。
百日咳菌の検出報告は医療機関での検出報告の方が多い(表1)。岡山県では熱心に分離が行われ,医療機関報告の2/3 〜1/3 を占めている。
図6は1987年度厚生省伝染病流行予測調査による百日せきELISA抗体保有状況である。LPF−HA1単位のレベルでみた場合,日本では3歳までに90%以上が百日せき抗体を獲得している。また,予防接種歴別で比較すると,ワクチン接種歴あり(T期2回以上)の群はどの年齢でも高い抗体保有率を示すのに対し,ワクチン接種歴なし群は年齢とともに抗体保有率が上昇する。ワクチン未接種児の保有率は自然感染による抗体獲得率とみることができるので,未接種児はほぼ直線的に学童期以前に感染を受けていることになる。
なお,百日咳ワクチンの効果を評価するために,「厚生省,予防接種研究班」の研究の一環として「百日せきワクチンの有効性の評価に関する研究班(主任研究者:木村三生夫東海大教授)」が,昭和63年度以降の2年計画で作業を開始した。この研究班は,菌分離を指標として百日せきワクチンの有効性を評価することを目的とし,菌分離には全国20の地方衛生研究所と予研が協力してあたっている。現在,ワクチン接種歴と菌の分離成績に関する調査がすすめられている。
図1.年次別百日咳り患率
図2.百日せき様疾患患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図3.一定点当たり年間患者報告数(感染症サーベイランス情報)
図4.年次別百日せき様疾患患者年齢分布(感染症サーベイランス情報)
図5.都道府県別百日せき様疾患患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年次別百日咳菌検出状況
図6.百日咳ELISA抗体保有状況 年次別比較と予防接種歴別比較(厚生省伝染病流行予測調査1987年度成績)
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