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1988年10〜11月にかけて発病した静岡県東部の恙虫病患者6名からRickettsia tsutsugamushi(Rt)が分離されたので,その概要を報告する
検体は6〜9病日の血ぺいで,接種まで4℃で保存した。分離方法としては血ぺいを等量のSPG液で乳剤とし,1検体につき3匹のサイクロフォスファミド投与マウスに腹腔内接種した。次いで2週間後に腹腔内細胞を採取し,ホモジナイズしたものを低速遠心し,その上清をL929細胞へ接種した。一方,マウス脾臓は乳剤とし,サイクロフォスファミド投与マウスに接種した。L929,マウスとも2週間隔で継代したところ,6例とも3代目までにギムザ染色によりRtが確認された。なお,L929とマウスでは分離状況に差はみられなかった。
分離株の抗原性を標準株に対するモノクローナル抗体を用いて検討してみると,4株は抗Gilliamモノクローナル抗体3系統中1〜2系統に反応したが,2株はいずれの抗体にも反応しなかった。また,標準株および宮崎県の患者由来株である川崎株と黒木株を抗原として作成したモルモット抗血清との反応性からGilliam系の4株は川崎株に,残りの2株は黒木株に近縁であることが確認された。
1983〜1987年の6年間に未処理のマウスを用いて分離された患者由来の2株および野ネズミ由来の82株はすべてKarp型であったことから,今回分離された株はマウスに対し弱毒性のRtである可能性が高く,分離に際し免疫抑制マウスあるいは培養細胞を用いることの有用性が示唆された。
静岡県衛生環境センター 川森 文彦,秋山 真人,幾島 隆雄,三輪 好伸,中津川 修二
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