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Vol.10 (1989/4[110])

<国内情報>
眼からのポリオウイルスの分離


 9ヵ月の女児の眼ぬぐい液からポリオウイルス1型が分離された。

 児は1988年11月24日に1回ポリオワクチンを投与されている。12月1日より鼻汁,眼脂がみられ,翌12月2日に受診している。臨床診断名は急性上気道炎で,発熱はみられず,眼脂が著しく結膜の充血もみられたため,眼ぬぐい液が採取された。他の材料は得られていない。なお,児は発育が悪く,運動発達も遅い傾向にあり,脳神経小児科も受診している。

 本例の材料をポリオ1型の抗体で中和した後,FL,Vero,RD-18Sの3種類の細胞で他のウイルスの分離を試みたが,他のウイルスは分離されなかった。

 ポリオウイルスが眼から分離されることは極めて稀である。本例がポリオウイルスによる眼症状であるのか否か,また,発育遅滞との関係は不明である。

 当所で,眼ぬぐい液からアデノ,ヘルペスウイルス以外のウイルスが分離された例が,本例を含めて6例ある(表)。これらの例はいずれも眼症状があり,材料が採取されている。本情報においても少ないながら多種類のウイルスが分離されている。

 これらのウイルスが眼から分離されたことの可能性としては,

 1.ウイルス血症の結果,眼上皮細胞で増殖し,眼に症状を示した。

 2.咽頭のウイルスが鼻涙管を通って眼から分離された。

 3.咽頭,便のウイルスが手指を介して眼で増殖した。

 等が考えられるが,本例がどれにあてはまるのかは不明である。

 一般に小児疾患では眼ぬぐい液の採取は,咽頭,便などに比べるとわずかであり,積極的な検索をすれば,容易に分離されるものかもしれない。



鳥取県衛生研究所 石田 茂,本田 達之助
岡本小児科医院  岡本 博文








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