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Vol.10 (1989/5[111])

<国内情報>
プラスミドプロファイルによるShigella flexneri 2aの疫学解析−広島市


 一般に赤痢事例においては,飲食物からの菌分離および,聞き取りなどによる疫学調査での感染源の特定は困難とされている。同一感染源によるものか否かを判断するためには,菌側のより多くの疫学マーカーが使えれば極めて有用である。そこで,Shigella flexneri 2a(S. flexneri 2a)のプラスミドプロファイルが疫学解析に応用可能かを試みた。

プラスミドの検出は,Kadoらの方法に準じて実施した。

供試したS. flexneri 2aは58株で,すべての菌株がプラスミドを保有しており,これらはプラスミド泳動パターンにより33に分けることができた。家族内発生3事例からの分離株(1事例2名ずつ計6株)についてみると,事例1由来株は約95,35,30,4,2.6,2.1Md,事例2由来株は約120,90,7,2.6,2.1,1.3Md,事例3由来株は約95,35,9,4,2.6,2.1Mdのプラスミドをそれぞれ保有しており,同一事例内の泳動パターンは同じであり,異なる事例間の泳動パターンは異なっていた(写真)。

 薬剤耐性パターンとプラスミド泳動パターンの関係について比較検討した結果では,同じ耐性パターンを示す菌株においても泳動パターンが異なるものが認められた。

 以上の結果から,S. flexneri 2aのプラスミドプロファイルの解析は,疫学解析の1手段として有用と思われたので,1987年12月末から1988年3月にかけての3ヵ月間に広島市周辺で発生したS. flexneri 2aの散発11事例に応用してみた。1事例の家族内発生例を除き,疫学調査で事例間に関連性は認められず,感染源不明であった。これら11事例12名から分離した12株は,いずれもTC,SM,CP,ABPC,ST,NAの6薬剤に耐性を示し,プラスミド泳動パターンは,12株とも同一で5つのプラスミド(約120,70,2.6,2.1,1.3Md)を保有していた。以上の結果,菌株間に違いは認められず,同じ感染源によるものではないかと推測された。



広島市衛生研究所 伊藤 文明,岸本 亜弓,萱島 隆之,山岡 弘二,岡 新,荻野 武雄
広島市立舟入病院 兼丸 幸典,槙坪 慎一,相坂 忠一


 家族内発生由来S. flexneri 2aのプラスミドプロファイル





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