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リステリアの感染様式では食品を介する場合の他,病院内での新生児感染が重要とされている。1971〜1988年に新生児の交差感染が疑われた18組のリステリア症感染事例を解析した。
リステリア保菌の母親から経膣出生直後にリステリア症を発症した(初期発症)新生児の居る病院では,通常24時間以内に出生した健常新生児も5〜12日の間にリステリア症を発症する(後期発症)。36例の新生児中29例は血液あるいは髄液から,2例は表層材料から,残りの5例は分離材料は不詳であったがListeria monocytogenesが分離された。初期発症児の母親8名の,主として膣より同菌が分離されたが,後期発症児の母親から菌が分離されたケースはなかった。分離菌の性状は母子ともに同一で,血清型,ファージ型,DNA制限酵素バターンなどでは区別できなかった。交差感染は分娩室あるいは病室が同一か,あるいは隣接している場合に起こっており,看護婦等のスタッフ,使用した蘇生器,体重計等の機器が共通であったためと考えられた。
子宮内感染があれば羊水中のL. monocytogenesは108CFU/mlと言われ,出産の際は母子共に,本菌によって重度に汚染されていると考えられる。従って出産ごとに機器の取り替えと消毒に留意するよう警告された。1967〜1985年の英国における新生児リステリア症168症例中,後期感染の1/4は交差汚染によるものと思われる。1978年に出生37,000当たり1例であった新生児リステリア症が,1987年は9,700当たり1と増加傾向にある。
(CDR,89/16,1989)
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