|
平成元(1989)年5月16日,山形県南部の長井市立総合病院に野兎病が疑われる患者が入院。右腋窩リンパ節(鶏卵大・膿瘍)から野兎病菌が分離された(分離:山形衛研,同定:福島市・大原総合病院)。
患者は,長井市に住む51歳の女性。4月28日山菜採取のため付近の山に入った。作業中右手指にトゲを刺してしまった。そして間もなくウサギが死んでいるのに出会い,その死体に触れたという。5月1日から発熱,右手指の膿瘍。そして右腋窩リンパ節腫脹も現れ,近所の医院を受診したが軽快せず,5月16日長井市立総合病院に入院。上記のようにリンパ膿瘍から野兎病菌が分離された。
野兎病は届出の法的規制がないことなどからその実数を把握することは非常に難しいが,これまで愛知県から北海道に及ぶ広い地域,特に東北地方において,11月〜1月および4月〜6月の季節に多く確認されている(佐藤 佶:大原総合病院年報28(35),9〜15,1985)。
表1に過去4年間に東北地方において確認された患者数を年次別に示した。すべての症例が血清学的に診断されたものである。ちなみに,山形の場合,野兎病菌分離,皮内反応および血清抗体価上昇,すべて陽性の事例は,1980年および今回の事例のみである。
山形県衛生研究所 槇 十秋
表1.野兎病患者確認数(1985〜1988年,東北地方)
|