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エコー11型ウイルス(E11)は,福岡県においては1984年に無菌性髄膜炎,1985年には不明発疹症の患者からそれぞれ少数分離されたが,その後の流行は確認されていなかった。
ところが,本年4月と5月に一部の地域(筑豊地区)の不明発疹症患者から分離され,以後6月から8月にかけて県下全域の不明発疹症,無菌性髄膜炎,手足口病,夏かぜ症候群,不明熱等の患者27名から計43株が分離された。これらのウイルスの疾病別,年齢別分離状況を表1に,月別の分離状況を図1に示した。不明発疹症は患者数も0歳児が最も多く,E11の分離率も0歳から2歳までの低年齢層が高かった。不明発疹症患者の71%に38〜39℃の発熱がみられ,有熱期間は2〜3日の患者が最も多かったが,6日間継続した例もあった。発疹は低年齢層(0〜1歳)に著明にみられ,1〜2mmの比較的均一な紅斑と2〜4mmの丘疹状紅斑の2種類に分かれ,また,発疹の発現も有熱中発疹と下熱後発疹が半々であった。
ウイルスの分離・同定にはVero,HeLa,FL,RD-18Sの各細胞を使用したが,E11に対して最も感受性の高かった細胞はFLで,次いでVeroとRD-18Sが同程度であり,HeLaは感受性が低かった。検査材料別のウイルス分離率は糞便から71%,鼻咽頭材料から60%,髄液から14%であった。なお,E11の他に不明発疹症からはE18,無菌性髄膜炎からはCox.B2型ウイルスもそれぞれ少数分離された。
福岡県衛生公害センター 梶原 淳睦,千々和 勝巳,福吉 成典
表1.福岡県におけるエコー11型ウイルス分離患者の疾病別・年齢別分離状況(1989年4月〜8月)
図1.月別E11分離株数
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