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アカツツガムシの媒介によるつつが虫病(古典的つつが虫病)は,特定地方の風土病とされていた。しかし,1980年以降急激に増加している非アカツツガムシの媒介による本病(新型つつが虫病)は,従来つつが虫病の発生のなかった地域にも及んでいる。
つつが虫病の診断は患者からの病原体検出および特異抗体の検出がある。このうち,病原体検出例は,病原微生物検出情報の月報に収録され,関係機関に報告されている。しかし,本病の診断の大部分を占める抗体測定による診断例は,病原体検出ではないため,現在のシステムでは収集されない。
他方,地方衛生研究所(地研)におけるつつが虫病の血清検査体制はほぼ確立されており,各地で発生する本病の血清診断のほとんどは地研で行っている。
こうした状況のもとに,地方衛生研究所全国協議会では,厚生科学研究費補助金による研究事業のなかで,1988年から,血清診断例も含めたつつが虫病患者の情報収集・還元に関する方策について検討してきた。1989年3月には調査票案を全国の地研に配布し検討して頂き,1989年9月に手引書とともに調査票を各地検に発送し,地研に集められる患者についての調査をお願いした。
調査票発送から1990年5月31日までの約9ヵ月の間に,1989年度のつつが虫病様患者発生状況が18地研,1大学から報告された。回収された調査票は386枚で,同一患者について追加報告されたものを除き,つつが虫病様患者数は358名(血清診断で本病が否定されたものも含む)であった。これは昨年まで予研坪井技官によって電話で集約していた患者数から推定して,地研に集められている件数の1/2〜1/3と思われる。まだ,患者発生数の多い地研からの調査票が未着であるが,調査を依頼して半年以上経過したことから,一応の解析を試みた。表はつつが虫病様患者のうち抗体測定でつつが虫病と診断された267例(病原体分離1例を含む)について,報告機関別,発生月別にまとめたものである。
患者発生月:発生のピークは,山形,秋田大の報告例を除き,いずれの地域においても10〜12月で,11月の患者数は全患者の半数を占めていた。1988年度の患者数と比較してみると,千葉,岡山,熊本で増加傾向がみられる。
患者性別:岩手,島根,長崎,熊本では一方に片寄りがみられたが,全体的にみると,性差はなく,合計276名中126名が女性であった。
その他表に記載されていないものとして:
感染推定場所:患者届出機関の県と異なる例があった。
臨床所見:刺し口があるにもかかわらず,抗体陰性の例があり,紅斑熱の抗体測定の必要性がある患者が報告されている。
血清抗体価:Kato,Karp,Gilliamの各抗原に対する抗体価が,患者の感染地域によって異なる傾向が示されている。
調査票の解析はまだ不十分であるが,解析結果をどう還元していくか,検討中である。
文責 事務局 萩原
1989年つつが虫病患者数
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