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Vol.11 (1990/9[127])

<特集>
クラミジア 1987〜1989


 厚生省感染症サーベイランスによる陰部クラミジア感染症の患者発生は,月別の発生数の変動は小さいが,定点当たり年間患者数は1987年19.76,1988年20.51,1989年21.46と暫増している。逆に淋病様疾患が暫減しているため,サーベイランス対象の5つの性感染症患者数全体に占める陰部クラミジア感染症患者数の割合,および淋病様疾患患者数に対する比が増加した(表1)。特に女性においてこの傾向が顕著である(図1)。

 また,年齢階級別にみても全体的に定点当たり年間患者数が増加傾向にあるが,女性の増加率が男性を上回ったため性比が減少した(表2)。しかし,10代<20代<30代<40代と性比が高くなる傾向は変わらない。

 クラミジアは1986年〜1990年6月に1,333検出された。そのうち935(70%)がサーベイランス定点で採取された材料からの検出である。1987〜1989年3年間について月別検出数をみると,季節変動は少ないものの,8〜9月に増加している(表3)。

 クラミジアが検出された検体の種類は泌尿生殖器由来が1,320,眼ぬぐい液7,鼻咽喉材料6である。

 眼ぬぐい液からの検出例は全例が熊本県からの報告で,サーベイランス定点の角・結膜炎患者から採取された材料(1988年4例,1989年1例,1990年2例)から蛍光抗体法(FA)で検出されたトラコマチスである。患者の年齢は15,20,20,28,35,61,63歳,男4,女3で,うち1例にロホー性結膜炎,3例にトラコーマの記載があった。鼻咽喉材料からの検出例は前回特集 (本月報第9巻9号) を参照のこと。

 泌尿生殖器由来の検出例1,320例中875例はFAで,316例は細胞培養,125例は酵素抗体法(EIA)で,4例はFAと細胞培養の両者で検出された(表4)。検出数はサーベイランスが開始された1987年が最も多く,以後毎年減少している。これはサーベイランスでの陰部クラミジア感染症患者数の増加傾向に反しているが,クラミジアの検査が一般に普及したことにより,地研における検査数が減ったためとみられる。

 泌尿生殖器由来の検出例について性別に臨床症状をみると,男745例では泌尿生殖器疾患723,角・結膜炎1,無症状7,不詳15,女573例では泌尿生殖器疾患375,発熱2,発疹,口内炎,関節筋肉痛各1,無症状134,不詳60であった。女は妊婦などを対象に,産婦人科患者の調査成績が含まれるため,当初無症状と不詳が多かったが,その数は1987年78と31,1988年26と19,1989年25と10と減少している。

 泌尿生殖器由来の検出例について性別に臨床診断名をみると(表5),男では陰部クラミジア感染症,非淋菌性尿道炎,淋病様疾患が,女では陰部クラミジア感染症,検査希望が主なものとして挙げられる。集計の便宜上,女で「外陰炎」,「膣炎」,「頸管炎」が記載されていた例は「記載なし」に含まれている。

 泌尿生殖器由来の検出例について性別に年齢分布をみると全例が16歳以上で,男女とも20代,30代,40代,10代の順に多く,女は40代と10代がほぼ同数である(図2)。性比は全体で1.3,泌尿生殖器疾患の有症者に限ると1.8で,特に30〜40代で1.5(有症者2.2)と男性が多くなっているが,サーベイランスの性・年齢分布(表2)に比べ性比が小さい。産婦人科患者からの検出報告が全体に占める割合が大きいためと考えられる。



表1.年別性感染症患者発生状況,1987〜1989年
表2.年齢別陰部クラミジア感染症患者発生状況,1987〜1989年
図1.性別陰部クラミジア感染症対淋病様疾患の年次推移
表3.年別月別クラミジア検出数
表4.検出方法別泌尿生殖器由来クラミジア検出数の年別推移
表5.泌尿生殖器由来クラミジア検出例の臨床診断名
図2.泌尿生殖器由来クラミジア検出例の性・年齢分布1986年1月〜1990年6月





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