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イングランド/ウェールズ,1960〜89:1989年中の暫定患者数は26,180,死亡6。MMR導入による接種率の向上で罹患年齢の上昇が予想される。1989年は15歳以上が8.9%。
図は1960年以降の麻しん報告数(10万対),患者来診数とワクチン接種率である。1990年は報告数,受診数とも最低である。80%の子供が生後2歳になるまでにワクチン接種を受けている。
(CDR,90/03&90/25,1990)
スイス・ジュネーブ,1989:50ヵ国741人の生徒が在籍する私立インターナショナルスクールで1〜3月(ピークは2月15〜28日)に26人の集発があった。初発はクリスマス休暇を家族と過ごした中央アフリカの生徒で,ただちに父兄に通知が配布され,ワクチン未接種者225人中192人にワクチンが接種された。日本人生徒21人に罹患者はなかった。スイスの麻しん対策の問題としては,ワクチン接種が強制でなく,接種率および罹患報告がないこと,さらに対応システムの不備が指摘された。
(WHO,WER,65,No.23,1990)
米国・ワシントン,1990:1990年の当初26週に前年の約5倍の266例が報告された。詳細な報告のえられた218例中,101人が5歳以下(16ヵ月以下が51例),5〜19歳50例,20歳以上は67例だった。49人はワクチン歴あり,37人が医療機関感染,2人(30と36歳)が肺炎により死亡,59人が入院した。感染源の輸入(とくにメキシコから)と医療機関における感染が問題である。ワクチン諮問委員会は医療従事者にワクチン2回接種を行うよう勧告を出した。
(CDC,MMWR,39,No.28,1990)
米国・シカゴ,1989〜90:1989年に2,232(死亡8),さらに1990年1〜5月に389例(10万対74,全国平均の10倍)が報告された。1歳以下の乳児が最も多く,20歳以上は78例。患者の25.3%はワクチン接種歴あり,非接種患者のうちワクチン対象年齢は56%(全体の42%)だった。当局は5月5日にワクチン接種下限を12ヵ月齢に,さらに,流行地域では7月31日に6ヵ月齢に下げた。ワクチン接種不成功例が患者の40%を占める(CDC未発表データ)から,ワクチン諮問委員会は麻しん2回免疫を勧告しているが,最優先は規定期間中の1回接種の完全実施である。
(CDC,MMWR,39,No.19,1990)
英領バージン諸島,1989〜90:1989年9月〜90年第15週に,200以上の患者が報告された。流行は密集地域に住む学童の家庭内および学校感染が中心だった。コールドチェインおよびワクチン効果に問題はなく,報告の遅れが対応を遅らせている。患者の65%はワクチンで防げる対象群であった。
(CAREC Surveillance Report 16,No.4,1990)
カナダ,1989:1〜7月にケベック州Hull地域で流行がめだったので,発生が低かったオタワと比較し,流行要因を追跡した。両地域の比較で,発生数は143と79だが,10万対でみて238と11.3,(18.7倍),特に学童年齢ではHull地域が62.2倍であった。学童のワクチン接種率は83〜53%と97〜98%だった。オタワでは1983年以降入学時に麻しん免疫証明の提出を法的に要求している。Hullの患者の65%はワクチン接種対象群なので,この接種率の差が主な流行要因とみられた。
(Canada DWR,16,No.24,1990)
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