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Vol.11 (1990/12[130])

<国内情報>
福島市におけるS.Enteritidisファージ型34による食中毒について


 昨年10月上旬,福島市内デパート社員食堂を原因施設として下痢(97.7%),腹痛(90.7%),発熱(86.0%)などを主訴とする食中毒が発生した。地元福島保健所の患者や保菌調査の結果,合計17件のS.Enteritidisが分解された。この年,他府県で卵から由来した本菌による食中毒事件が多発したことから,卵からの汚染が原因ではないかと推定されたが特定するには至らなかった。

 本年9月上旬,また福島市内において夏休みを終え授業が始まったばかりの小学校の給食施設を原因とする食中毒が発生した。この小学校は給食センターからの配送を受けずに独自に給食調理室をもっており,教職員31名を含め659名の喫食者のうち,教職員8名を含め407名が腹痛(83.8%),下痢(57.7%),発熱(49.1%),頭痛(46.4%),嘔気(19.4%),嘔吐(9.6%)等の症状を訴え発症した。ウイルス性と細菌性の両面から衛研と保健所とで調査を行ったが,糞便25件から16株のS.Enteritidisが分離され,本菌による食中毒と決定された。給食が休みの土曜日,日曜日が間に入り,残された食品はすでに無く,原因食品は特定できなかったが,最も原因食として疑いが残る8月31日のメニューは,食パン,牛乳,ソフトチーズ,じゃがいものカレー煮,グリーンサラダであった。

 この2つの食中毒事件で分離された菌株,合計23株を国立予防衛生研究所ファージ型別室に送り,検査の結果いずれも34型であった。なお,この時に感染症サーベイランス事業で分離された2例のS.Enteritidisのファージ型別を依頼したところ,同様に34型であった。1例は平成元年8月8日採取された1歳8ヵ月の女児からの分離株で,嘔吐と水様下痢をともなった急性消化不良症の診断名の患者であり,他の1例は下痢,腹痛を主訴とする急性大腸炎の9歳の男児から分離された菌株であった。いずれも福島市内の医院からの検体ではなく,郡山市内の検査定点からの検体であった。S.Enteritidisの汚染は食品原材料等を介して広く汚染されているものと考えられ,食品取扱い業者に対する衛生思想の普及,啓蒙の必要性はもとより,各家庭においても充分な衛生管理が必要と思われる。



福島県衛生公害研究所 小柳 潔





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