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ホテルでの集発:1988年12月にホテルに宿泊した136名の団体客中68名が食中毒に罹患した。患者発生は12月26日〜29日,5名が入院。患者68名中29名からS. Enteritidis,ファージ型4が分離されたが9名の調理人から菌は検出されなかった。喫食調査の結果,チョコレートムース,レモンムース,クリームカラメルが疑われた。これらはいずれも生卵が使われており,調理場の衛生状態が良好なこと,調理人に保菌者がいなかったこと等から食中毒の原因は汚染鶏卵によると思われる。
ボディービルダーへの感染事例:体力増強のために喫食した生卵で,若く健康な青壮年のボディビルダーが重症のサルモネラ食中毒に罹患した4事例が報告された。原因菌はいずれもS. Enteritidis,ファージ型4で,1事例は冷蔵庫に残っていた生卵からも同一菌が分離された。罹患した4名中3名は下痢,嘔吐,腹痛,脱水症状のため7〜15日の入院を要した。このうち17歳の青年はライター症候群を併発し,11日後に退院したが,完全に回復するのに8ヵ月かかった。
CDSCからのコメント:1989年に報告を受けた955例のサルモネラ集団発生のうち115例は原因食が特定され,うち42例(37%)は鶏卵であった。1990年の第3四半期までに原因の特定された事例は71例(616例中)で,うち33例(46%)は鶏卵であった。1989年および1990年の鶏卵による75事例のうち68例(91%)の原因菌はS. Enteritidisであった。本菌の検出率はその他の食中毒では低く,食肉による集発では48例中28例,その他の原因食による集発では63例中31例であった。
(CDR,90/47,3,1990)
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