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Vol.12 (1991/3[133])

<国内情報>
コクサッキーA24変異株による急性出血性結膜炎−千葉県八千代市の症例


1989年9月から11月にかけて,千葉県の銚子,佐倉,茂原の各地区でコクサッキーA24変異株(CA24v)による急性出血性結膜炎(AHC)の流行があったことが報告されている。同時期に,結膜炎症状を訴えて来院した千葉県八千代市在住の父子例の1例からCA24vが分離されたので,その概要について報告する。

症例1は13歳の男子(症例2の長男)で,1989年10月6日から右眼,翌7日から左眼の充血,眼脂,眼痛が出現したため,同日当科を受診した。両眼に結膜の充血,濾胞形成,球結膜下出血,点状表層角膜炎がみられ,軽度の耳前リンパ節腫脹をともなっていた。発症の経過,臨床所見からAHCを疑いウイルス分離を試みたが,ウイルスは分離されなかった。患者はその後来院していないが,4〜5日で症状は消失したという。

症例2は症例1の父親で,長男の結膜炎発症の2日後(10月8日)から右眼,その翌日から左眼の充血,眼脂,異物感が始まり,当科を受診した。症例1と同様,結膜の充血と軽度の濾胞形成があり,球結膜には著しい浮腫を認めたが,球結膜下出血はみられなかった。また,右側の耳前リンパ節の腫脹を認めた。AHCを疑いSRLに検査を依頼したところ,左眼結膜ぬぐい液からCA24vが分離された。

長男からは原因ウイルスは分離できなかったが,両症例の発症の経過ならびに父親の周囲に長男以外に結膜炎症状を持った者がいなかったことからみて,感染経路として長男から父親への家族内感染がもっとも考えやすい。当時,長男の通う八千代市内の中学校で結膜炎が流行していたという。この中学校の生徒はほとんどが八千代市内から通っているが,佐倉市から通学している生徒が数名おり,この2症例は佐倉地区でのCA24vによる結膜炎の流行と関連していた可能性が考えられる。



東京女子医大・眼科 中川 尚 内田幸男





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