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ペルーで大規模なコレラの流行が続いていることに鑑み,WHOの週報ではコレラ関連の記事を2号にわたって扱っている。
第1部:第7次コレラパンデミーのレビューを行い,1961年にインドネシアのセレベスに端を発し,アジア・アフリカ地域を席巻していたエルトールコレラが今回初めてアメリカ大陸に上陸した経緯を述べている。また,PAHO(Pan American Health Organization)によるペルーのコレラの現況が報告されている。1991年2月21日現在患者数32,585,入院患者6,501,死亡139である。罹患率は0.4%,患者の20%が入院し,入院患者の2.1%が死亡した。患者発生は沿岸地域から内陸部に広がっている。
(WHO,WER,66,No.9,61,1991)
第2部:アメリカ大陸のコレラ対策本部がWHO地域事務所に置かれ本格的な活動を開始した。コレラ流行防止のためのガイドラインが出されたが,その中でコレラの治療には重症者以外は経口輸液(ORS)が有効であること,テトラサイクリンの投与は原則として重症患者だけでよく,予防投薬は不必要であること,ワクチン接種は効果が低い上,接種したことで衛生に関する注意がおろそかになるデメリットが大きいこと,等の注意を掲げている。さらに,流行を食い止めるためにはコレラに罹患した場合の届出を速やかに行うとともに,し尿で環境を汚染しないよう教育することが必要であるとしている。UNDRO(United nations Office of the Disaster Relief Coordinator)ではペルーへの援助を世界各国へ呼びかけ,援助国とその内容を公表している。
(WHO,WER,66,No.10,65,1991)
参考:米国のCDCは各国の防疫担当機関にペルーのコレラに対する情報を提供しているが,3月13日付でCDCから予研に送られた手紙によると,3月8日現在の発生数は患者65,198人,入院患者16,754,死者363である(PAHOの報告)。
PAHOによるとエクアドルでも233例(入院50,死亡1)のコレラが発生した。さらにコロンビアでも1例のコレラ発生の報告があった。この患者はエクアドル国境近くの住人で,下痢症で死亡した人(確定診断なし)との接種後に発症したものである。
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