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1990年12月3日,忍野村でソンネ菌による赤痢が発生し,翌年1月7日まで計10,417名の検便を実施し,患者3名,保菌者63名の計66名の赤痢菌陽性者が判明した。ソンネ菌が65株(患者3名,保菌者62名),フレキシネル1b菌(保菌者)が1株であった。
表1に検査状況を示した。糞便の他に井戸水348検体についても菌検索を実施したが,すべて陰性であった。忍野村の人口は8,092人であり,12月16日から全住民を対象に検便を実施する方針がとられた。
患者,保菌者の対象別内訳は表2のとおりである。保菌者と判明する以前に症状を有していたものが25名(39.7%)あり,初発患者が出た12月3日以前の有症者は13名である。また,8月(忍野村に宿泊)と11月(忍野村住民:小学生)にもソンネ菌による赤痢患者が各1名発生していた事実があり,分離株はコリシン型も薬剤感受性も今回分離された赤痢菌と同じであった(表3)。
忍野村は富士山の湧水が豊富な地域であり,井戸水利用者が村全体の83%を占め,排水も家庭敷地内浸透処理方式がとられている。今回の赤痢の発生原因は不明であるが,患者,保菌者のなかには上水道利用者も7名いたが,井戸水から赤痢菌は分離されなかったものの,8月以前から何らかの形で井戸水の赤痢菌汚染があり,その結果,住民の一部が赤痢菌を保菌することになった可能性が高いと考えられる。同時にサルモネラ保菌者をみたが,0.14%(10名/7,117名)であった。
山梨県では,上水道の加入促進と下水道の普及につとめることとし,当面は浄化槽の適正管理および井戸水の使用に際しては滅菌器を設置し,作動状況の確認と年1回以上の水質検査を受けるよう飲用水の安全確保の徹底をはかった。
山梨県衛生公害研究所 金子通治
表1.赤痢菌検査状況
表2.患者,保菌者の対象別内訳
表3.分離株のコリシン型と薬剤感受性
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