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Vol.12 (1991/6[136])

<国内情報>
広島市内で発生した赤痢集団事例


平成3(1991)年3月9日から4月8日にかけて,市内中区でソンネ菌による集団赤痢が発生したので,その概要を報告する。

発生経過(表1):3月9日,中区のA小学校児童1人が同区内の病院で真性赤痢と診定され,保健所へ届出がなされた。この届出を発端として,11日B幼稚園児,13日A小学校児童及び家族,15日には新たにC保育園児の患者発生届があり,真性患者7人,疑似患者2人に達した。これら患者発生のみられた3施設は,中区の同一地区に集中しており,この地区を中心とした集団発生の疑いが持たれた。そこで患者家族,接触者等の検便に加えて,15日からは患者発生のみられた3施設の園児,児童を含めた関係者,さらには周辺の小学校,保育園等5施設およびスーパー等食品販売関係30施設について検便を実施した。その結果,初発から4月8日までに医療機関からの届出を含め,菌陽性者55人,疑似患者5人の計60人に及んだ。その内訳は,A小学校児童10人,B幼稚園児3人,C保育園児および職員35人(疑似患者5人を含む),患者家族12人で,これら3施設以外の施設等から赤痢菌は検出されなかった。4月9日以降,菌陽性者の多かったC保育園を中心に健康監視と検便を実施したが,いずれからも赤痢菌は検出されず,5月14日をもって終息とした。感染源は究明できなかったが,疫学調査,分離菌の性状等からこれら施設の赤痢は同一系と判断された。

分離菌の性状(表2):分離された55株の生物型は1型(Ewingの型別),a型(Sztrum-Rubinsten)であった。また,コリシン型も全て6型を示した。薬剤感受性試験では,47株がTC,SM,EM,ST,DOXYの5剤耐性,8株がABPCを加えた6剤耐性を示し,分離株はABPC感受性の違いにより,2つのパターンに分かれた。同一家族内でABPC感受性に相違がみられた患者兄弟について疫学調査を行った結果,ABPC耐性菌が分離された患者の方は,初発患者発生以前に医療機関においてABPC投与をうけており,耐性を獲得したものと推察された。従来からソンネ赤痢菌による赤痢は比較的症状が軽いことから,風邪等の他の疾病と間違われやすく,初発患者の発見の遅れから集団へと拡大することが知られている。本事例においても,患者が多発した保育園では2月上旬,下痢症状等を示した園児が多発していたことが疫学調査により明らかになった。よって,患者発生はこの頃から始まり,風邪や感染性胃腸炎の多発時期と重なったため発見が遅れ,他の2施設へ波及していったものと推察される。しかし,患者発見後の一斉検便や施設の閉鎖措置等の防疫対策により,これら3施設以外への拡大を防ぐことができた。



広島市衛生研究所 山岡弘二 岸本亜弓 吉野谷進 伊藤文明 松石武昭 荻野武雄


表1.赤痢発生概況
表2.分離菌の諸性状





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