|
感染症サーベイランス情報における今シーズンの一定点あたり無菌性髄膜炎患者報告数は,5月までは例年のレベルを下回っていたが,6月に急増し,1983,1986年に次ぐレベルとなった(図1)。7月に入ってからも全国各地から髄膜炎患者多発が報告されている。
6月までの一定点当たり無菌性髄膜炎患者累積報告数が最も大きかったのは新潟県16.17,次いで熊本県14.80,富山県12.00,石川県10.00で,この他10都県市が3〜6のレベルである。(全国平均2.30)。ブロック別では東海・北陸3.02,近畿2.85,関東甲信越2.58,九州・沖縄2.34,中国・四国1.63,東北1.33,北海道0.13である。
患者の年齢は5〜9歳47.6%,0〜4歳39.1%と年長児の割合が大きい。
髄膜炎患者から分離されるウイルス報告の7割以上をエンテロウイルスが占める。エンテロウイルスの流行型は年ごとに入れ替わるのが常であるが,1989,1990年は2年連続してエコーウイルス30型(E30)が首位であった
(本月報Vol.12,No.2参照)。
さらに1991年に入ってもE30の検出報告が続き,特に集団発生の情報がめだっている。
1991年1月以降の検出例として8月5日までに12地研から合計128例のE30が報告された。115例が無菌性髄膜炎患者からの検出報告である(表3)。大分県では,1990年10月以降6月まで毎月E30が検出されている
(本号参照)。
1980年から現在までのE30検出報告を表1に示した。1983年に全国的に615が報告されたのが最高で,1989年は中国,四国,近畿を中心に525,1990年は全国的に556が報告された。1984年愛媛,1986年福島で局地的流行があった。どの年の流行でもE30検出例においては高い割合で髄膜炎が報告される。1980年からの累計でみると臨床症状(または診断名)が記載されたE30検出報告1,846中,1,475(79.9%)に髄膜炎が報告された。
1989年1月から現在までの月別E30検出状況を図2に示した。1989年は6〜7月に急激に増加し,8〜11月に段階的に減少した。1990年は6月以降増加し,10月をピークとして12月までかなりの数が検出された。さらに1991年に入っても報告が続き,6月に入って増加がめだってきた。
この分離報告を地域別(表1)にみると,1989年に多く,その後は報告が少ないか全くない地域(鳥取,香川,徳島,奈良など),1989年,90年とも報告が続いた地域(島根,広島,長崎など),さらに1989年にはほとんど検出されず,1990年以降検出されている地域(その他の多くの地域)があり,本年は一般に,1989/90年に検出報告が少なかった地域で無菌性髄膜炎患者が多発している傾向がうかがえる。
E30検出例の年齢分布をみると,各流行年ともにピークは4〜6歳であるが,最初に大流行した1983年は0歳および7歳以上を含めて幅広い年齢から検出されたのに対し,1989,1990年は4〜6歳に患者発生が集中している(図3)。
E30は髄液からの検出率が高い(表2)。
本年1月以降髄膜炎患者から分離されたウイルスとして8月5日現在合計185例が報告されている(表3)。
図1.月別無菌性髄膜炎患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.年別報告機関別エコーウイルス30型検出状況 1980〜1991年(1991年7月末現在数)
図2.エコー30月別検出状況
図3.エコー30検出例の年齢分布
表2.検体の種類別エコー30検出状況
表3.髄膜炎患者からの住所地別ウイルス検出状況(1991年1〜7月・速報)
|